隠れ蓑〜Another story〜
「、、へぇ、彼氏いるんだ。」
小声で呟いた圭の声が、少し機嫌が悪く感じがして思わず顔を上げる。
するとエレベーターへの視線は、より一層強くなっていてドクンと胸が跳ねた。
同期として一番近くにいた筈の私でも、初めてみるその表情に隣のマキも驚いている。
こんな切なそうな表情の圭を知らない。
いつだって私達、女にはそういう顔をさせるくせに自分は絶対にしない。
そんな圭が彼女を見て、目を細めた。
「圭、、、、?どうし、、。」
私の言葉に被せて呟いた圭。
「なぁ、その男って何処の部署のやつ?」
「えっ、、!えっ、、!?た、確か庶務課の子じゃなかったかな!?!?津川くん、もしかして気に、、なるの、、、?」
「、、いや。何でもない。」
マキも戸惑いを隠せないようで、声を上げた。
無理もない。
こんな圭を見るのは、きっと誰もが初めてだから。