隠れ蓑〜Another story〜
結局、エレベーターに乗っていくまで圭は彼女の後ろ姿を眺め続けていた。
この日を境に圭が変わった。
適当に女を抱かなくなった。
あのプレイボーイとも呼ばれた男が、女を抱かなくなったという話は瞬く間に広がり論争が繰り広げられた。
病気になっただの、EDになっただの、ありもしない噂が飛び交った。
そして本命が出来たとも。
そんな圭だったが、唯一私とだけは関係を続けていた。
それが他の誰よりも〝特別〟な気がして少し優越感に浸っていた。
唯一、彼に抱かれる女。
彼に一番近い女。
だからこそ、見えてしまうものもあるのだとこの時、初めて知った。