隠れ蓑〜Another story〜
ルックスも良く、仕事ぶりも真面目で、物腰も柔らかい。
まさに受付にピッタリな人材だ。
上層部も前々から目をつけていたらしく、現役受付嬢である私の推薦という事もありすぐさま彼女へ異動の辞令が出た。
彼女を推薦したのは勿論、受付嬢に向いていると前々から思っていたから。
でも1番の理由は〝個人的〟に彼女に興味があったからだ。
圭の気になる唯一の存在である彼女を近くに置いて見定めたかった。
そんな嫉妬という真っ黒な感情がそうさせたのだ。
初めて顔を合わせた彼女は、戸惑いが隠せずに今にも泣きそうな顔をしていた。
それなのに、それを必死に押し殺し深々と頭を下げた。
「ほ、本日から庶務課より異動になりました。西村 晶帆と申します。私なんかが務まる仕事ではない思いますが、臨時とはいえこちらに異動が決まったからには精一杯努力して参りますのでどうぞご指導の方、宜しくお願いいたします。」
そう言って顔を上げた彼女の瞳は、真っ直ぐで純粋でとても綺麗だと思った。