隠れ蓑〜Another story〜
経理課は残業の多い部署だ。
だからもう既に帰宅したという事は考えてにくい。
あるとするなら自分の犯した罪に震え、動けずにいるかだ。
立ち続けて数時間。
人の気配も全くしなくなった出入り口に、ようやく現れた待ち人。
真っ青な横顔で俺には気付かず、通りすぎようとする女の行く手を阻む。
「っ、、、!」
俺に気づいた女は、目を見開きガタガタと震え始めた。
そんな女に躊躇なく声を掛けた。
『加害者がよくもまぁ、、被害者ヅラできるな。お前がしたのは立派な犯罪だ。』
「はっ、犯罪だなんてそんなっ、、!!私はただっ、、!!!す、少し懲らしめてやろうって思っただけでっ!まさか本当に階段から落ちるなんて思わなかったのっ!!!ちょっと可愛いからってチヤホヤされて、津川くんが居るのに他の男にちょっかい出して、、そんなの最悪でしょっ、、!?!?し、しかもっ、、妊娠してるって噂で聞いて、、。」
「仮に晶帆が妊娠してたなら、アンタの罪は更に重いな。俺の大切な人間を〝2人も〟殺しかけたんだからな、、。」
そう唸るように言葉を掛ければ、女は表情を歪めながら呟いた。