恋愛初心者です、お手柔らかに?
「ここ…」

「俺ん家。今日は一緒にいて、風邪で体調悪いの分かってるから、無理は言わないけど」

仕事でも見た事のない、真剣な表情に私は、黙って頷いた。


二人でタクシーを降り、齋藤君の部屋へとやってきた。

「大丈夫?しんどくない?」

「ありがと。点滴してもらったから大丈夫。ごめんね、心配かけて…」

齋藤君が、淹れてくれたコーヒーの匂いが部屋を包んだ。

何から話そう…

私の事、聞きたかった事…
何から…

「この間はごめん…白石課長と一緒だったのを見て腹が立ったんだ…」

沈黙を破ったのは、齋藤君だった。

「情けないよな…信じてない訳じゃないのに、やっぱり年上の方が信頼出来るのかなとか思ったら…あークソ」

私も聞かなきゃ…ちゃんと言わなきゃ。

「あ、あの齋藤君」

「え?何…?」

「私こそ…ごめんなさい。あの時、白石課長と行くべきじゃなかったのに、どうかしてたの」

齋藤は、私の話を黙って聞いてくれていた。
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