剛力家の三兄弟
「え?」
なんの為に?
「暫くすると、ペットボトルは膨張して、破裂する。そいつが帰る頃に置いておけば、驚いてバイクごとひっくり返るかもしれない。上手くいけば、打ち所悪く死ぬかもしれないぞ?」と憲剛は真面目な顔をして雅人に話す。
この人なに言い出すの?
刑事のクセに!
馬鹿なの!?
「な、なにを言ってるんですか!?
そんな事したら、犯罪じゃないですか!
警察がそんな事、教えて良いんですか?」
「そう犯罪だ。
そのカッターナイフで誰かを傷つければ、お前は犯罪者になる。
お前がペットの為に、仕返ししようと何かすれば、お前もそいつと同レベルに落ちるんだ。
もし、そいつが運悪く死んだりしたら、お前は殺人犯になり、そいつ以下になる。
もしかしたら、無関係の人を巻き込む恐れもある。
お前にその責任が取れるか?
お前は犯罪者になる覚悟があるのか⁉︎
お前が犯罪者になれば、お前だけじゃなく、家族も世間から冷たい目を向けられるんだ。
お前はそれで良いのか?」
雅人は無言で首を振った。
話を聞いて怖くなったのだろう。持っていたカッターナイフを手から離し、声を上げて泣いた。
真奈美はそんな雅人を抱きしめ、背中をさすっていた。
こんな話…
怖いよね?
悲しいよね?
辛いよね?
「俺が必ず捕まえて、お前に謝らせる。だから、お前はなにもするな?良いな?」と憲剛は雅人の頭をポンポンと撫で、そして、
「その不良中学生の名前か、住所分かるか?」と聞いた。
すると雅人は頷き、自分の兄だと言った。
えっー!?
嘘でしょ…
実のお兄さんに、雅人君が可愛がっていた、マロンちゃんを…殺されたの?
真奈美だけじゃなく、剛力三兄弟も驚いていた。
雅人の話を聞いている間、誰も、まさか雅人の実の兄の仕業だとは思わなかっただろう。
「ボウズ、諦めろ?」と憲剛は溜息をついて言う。
確かに相手が、実の兄なら、諦めるしかない。
もし、実の兄でも許せないからと、雅人が訴えると言っても、実際に訴えるのは、雅人の両親で、マロンをバイクでひき殺した、実の兄の親でもあるのだ。
互いに未成年だし、訴えるのは親で、賠償金を、払うのも親なのだ。
真奈美もこれはなんとも出来ないと、肩を落とした。