剛力家の三兄弟
嘘っ…
救急車!
救急車を呼ぼうとした所を見計らったかの様に、憲剛が現れ、逃げ去ろうとした少年を捕まえた。
「おい!逃げるな!? 逃げても無駄だ!俺は警察官だ!
お前、中学生だろ? て、事は、無免許運転だな⁉︎
そのうえ人身事故、このまま被害者が死んだら、殺人罪になるかもしれないな!」
憲剛は逃げ様とした中学生へ悠長に話している。
死んだら…
殺人罪…
「ちょっとそんな悠長な事言ってないで、救急車!」
119番に真奈美が電話しようとすると、倒れていた男が起き上がった。
そして被っていた帽子を取り、顔を見せた。
えっぇぇぇー!?
禎憲さん?
雅人の後をつけ、バイクの前に飛び出したのは禎憲だったのだ。
「禎憲さん⁉︎ 大丈夫ですか? 今救急車呼びますから、動かないで下さい!」
だが、真奈美の止めるのも聞かず、禎憲は立ち上がり、真奈美の電話する手を止めた。
憲剛は禎憲の事を気にすることなく、話を続けた
「そして、お前は被害者を見捨てて、逃げようとした。救護義務違反でもある!」
「救護義務違反?」
「救護義務違反とは、車両等の運行中に、ひき逃げ、衝突事故など、人身事故を起こした際に、道路交通法第72条に定められた必要な措置を講ずる事なく、事故現場から逃走する犯罪行為だ」と、禎憲が話す。
話を聞いた少年は、自分の犯した罪を知って恐ろしくなった様で震えだした。
だが、そんな彼に更なる追い討ちをかけるかの様に、他にも罪を犯してると教える。
教えたのは、いつのまにか現れていた明憲だった。
「この公園への車両の乗り入れは禁止されてる。よって迷惑防止条例違反にもあたる。そして、この公園は、隣の工場の社長の好意で、朝6時から17時の間のみ町の公園として提供してくれてる。言わばここは工場の敷地内であり、17時を回ってる今は、不法侵入にもあたる」
迷惑防止条例違反に、不法侵入…
「すいません!」
え?
謝ったのは少年ではなく、雅人だった。
「お前、弟の可愛がってた犬をひき殺したそうだな?
前回は自分の家の所有物だったかもしれないが、今度は違うぞ!?」と憲剛は怒りを露わにする。
「お兄ちゃんを許してください!…お兄ちゃん!…お兄ちゃんも謝ろう? 怪我させたこの人にも…ごめんなさいって一緒に謝ろうよ!」
雅人君の悲痛な叫びは、この兄である彼に届くのだろうか…?
真奈美は祈る思いで、雅人と雅人の兄を見守っていた。