剛力家の三兄弟

憲剛は“ちょっと行った所にコーヒーの美味しいカフェがあるんだ”と言って、真奈美の肩に手を回した。

自然に回された肩への手が、真奈美には心地悪い。
『今の二人みた?兄妹かな?』
『でも、すごい素敵よね?私も着物教室通おうかな?』

みんなが振り向くくらいの男前。
耳に甘い言葉を囁いて、手慣れたエスコート。

すれ違いざまに女の子達の、羨ましそうな視線を浴び、確かに女の子なら嬉しいしく思うし、憧れるだろう。
きっと悪いきはしないだろうし、彼等(三兄弟)の隣に立つのは喜ぶだろう。

でも、彼等は本命を作らないし、持たない。
その日その日で、女を変える。女をアクセサリーとしか思ってない。

それを知ってるからこそ、私は喜ばないし、期待しない。

きっと、明憲さんも何か考えての事だろう。
じゃなかったら、私を誘ったりしない。

「いい加減手を離してくれます?」

「慣れない草履は歩き難いでしょ?」

「肩を抱かれてる方が歩き難いです!」

「そんな事言わずに、もう少し付き合ってよ?」

カフェに入ると、彼は店内を見回し、顔をパッと明るくする。

えっ何?

憲剛は誰か知り合いを見つけた様で、真奈美の肩を抱いたまま、店内奥に座る綺麗な女性へ手を振る。
女性は真奈美を見るや、一瞬にして顔を歪めたが、直ぐに憲剛へ微笑みを向けた。

「ごめんね?待たせて?」

「いいえ。お忙しい憲剛さんですもの、来て頂いただけで嬉しいですわ?それに好きな人を待ってる時間も楽しいものですのよ?」

嘘っ…
この人、憲剛さんの…恋人?

「で、そちらの方は何方ですの?
妹さんかしら?
妹さんがいらっしゃるとは、伺ってませんでしたが?
憲剛さんご紹介頂けます?」

「あー紹介するよ?
彼女は僕の婚約者で、佐伯真奈美さん。母の知人の娘さんなんだ」

はぁ?
婚約者?
母の知人の娘さん?
1ヶ月ほど前に会ったばかりなのに?
行く当てなくて、剛力家へお世話になってるけど、婚約者って?
よくもまぁ、それだけの嘘が思いつく事・・?




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