剛力家の三兄弟
憲剛が帰らず、食べられなかったおにぎりと卵焼きは、翌日の明憲のお弁当となっていた。
「明憲さん、飽きませんか?
毎日同じおにぎりで?
もし、私に気を使ってくれてるなら、
気にしなくても良いですよ?
私が食べますから?」
「別に、あんたに気をつかってる訳じゃない。同じ食べるなら、知ってる人間が作った物が良いだけだ」
「だったら、禎憲さんのお店のランチだって、私が仕込みしてるじゃ無いですか?」
「あんたは仕込みするだけで、実際作って運んで来るのは違う」
確かにそうだけど…
「エミちゃんだって、私より長く働いている訳だし…
知らない人じゃ無いですよね?」
「知らない人間だ」
知らない人間って…
余りにも酷い言い草に思わず真奈美は怒りを露わにした。
「エミちゃんはずっと、明憲さんの事好きなんですよ?
そんな子が、変なもの入れたりする訳無いでしょ!!」
「そんな事分からないだろ?
人は誰もが、純真無垢で生まれて来る。
だが、生きていく為に欲が出て来る。
食欲に始まり、物欲、金欲、性欲、出世欲… そして、その欲を抑えきれず犯罪を起こす。
女は特に、見栄を張る生き物だ。
結婚する相手は、少しでも見栄えが良い、金のなる木を欲しがる。
違うか?」
「・・・」
「弁護士してると、そんな貪欲にまみれた人間ばかり見てしまう。下のアルバイトのエミとか言う女も同じだ。俺の事など何も知らず、ただ、少しばかり見栄えが良く、弁護士という職業の俺に、惹かれて欲してるだけだ」
「じゃ、明憲さん達の欲はなんですか?
親が、息子達の結婚を望み、孫の顔を見たい、家を守ってほしいと、親の欲を伝えても、あなた達は親の気持も考えず、煩わしいものから目を背け、好きな時に、気に入った女と好きな事をして、自分の欲だけを求めてる?
一緒じゃないですか!」
「・・・・」
「私も貪欲な人間ですから、偉そうな事は言えませんが、初めから、誰しもが貪欲な人間だと決めつけない方が良いと、思います!
今日、ユリさん、用事があって早目に上がるそうなんで、私、下(カフェ)に下りますので、後、よろしくお願いします!」
真奈美は、禎憲の探偵業の電話の切り替えをして、カフェへ降りて行った。