剛力家の三兄弟

自分が盗みなどしてない事は、真奈美自身がよく知っているが、エミやユリの方が、剛力家との付き合いは長い。
真奈美の訴えを剛力家の人間が、どこまで信じてくれるのか、真奈美の不安は隠せない。
真奈美は重い足を引きずりながら、憲剛の後ろをついて行った。

ダイニングルームの、扉を開けると、真奈美と憲剛以外、全ての者が揃っていた。
心配していたであろう、明憲や禎憲の顔を見る事が出来ない真奈美は、憲剛に促されるまま被告席(自分の席)に座る。

「では、開廷する」
元裁判官だった、剛力家の当主が、裁判の開始を知らせる。

あぁ、とうとう始まった…

「審議を始めるにあたり、審議内容を確認したいが、原告は、法子でいいのかな?」

「ええ。では、私から。
審議内容その1、本日、真奈美さんが突然姿を消した理由と、最近元気が無かった理由の解明」

とうとう始まったか…

「その2、以前の審議内容の確認を、今一度お願いしたいのと、原告側からの新たな提案をしたいと思います」

こんな茶番劇しなくても…
自分の身の振り方はもう決めてる。
明日にでもここを出て行き、
禎憲さんに迷惑かけた分のお金は、働いて少しづつ返していくつもりだ。

「その1に関しては、私、弁護側である禎憲から説明させて頂きます」

禎憲は真奈美に起きていた一連の事を話した。

あー法子さんにも知られちゃった…
でも今の状態なら、禎憲は弁護側では無く原告側じゃ無いの?

「ちょっと待ちなさい!そんな事が起きていて、今まで、あなた達は何もしないで放っておいたの!?」

法子は明憲と、禎憲に声を荒げてつめ寄る。
そして真奈美は、あまりの法子の迫力に体を強張らせた。





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