剛力家の三兄弟

「お前が俺で良いなら、一生捕まえてても良いぞ?」

「・・流石に無期懲役は辛いですね?
窃盗でも初犯なら、執行猶予つきますよね?」と、真奈美は苦笑した。

「さぁな?弁護士次第じゃ無いか?
なんなら、腕の良い弁護士紹介するけど?」

「・・弁護士ですか?
お金かかりそうですね?」

「だったら、法律に詳しい一般人だったらどうだ?
金かからないし、弁護士より凄い奴知ってるから、そっちも紹介出来るけど?」

弁護士より凄い人か・・
いちばん迷惑かけたくない人だよ。

「・・なんか、それもめんどくさそうですね?
いっそう海外にでも、逃げちゃおうかな…」

「ここで、お前を取り逃したら、俺の汚点になる。兎に角、裁判は受けてもらうからな?」

真奈美は、憲剛に連れられて、剛力家へ帰って来た。

「ただいま!」

真奈美は、いつもと変わらず大きな声で、挨拶して玄関を開ける。
すると玄関には明憲と禎憲の靴が有り、既に帰って来ている様だ。

憲剛さんが連絡したんだ…?
そうだよね…
探していたなら、見つかったと連絡を入れても不思議はないか・・

「じゃ、私、美代子さんの手伝いして来ますね?」

しかし、台所へ向かおうとする真奈美の腕を、憲剛は掴んだ。

「被告が何処に行く?」

「私…被告人?」

「お前は被告人じゃなくて被告だ!」

「えっだって、明憲さんに捕まったってことは、刑事事件で、刑事事件なら被告人ですよね?」

民事裁判を起こした人を原告、起こされた人を被告と呼ぶ。対して刑事事件では、訴えられた人を被告人と呼ぶ。
ところが、マスコミでは、刑事裁判の被告人も被告と呼んでいる。それは、罪が確定していない人を呼び捨ては出来ず、それでも逮捕された段階で、マスコミは事実上犯人扱いして “〇〇被告” と呼んでいるのだろう。

「そんな事よく知ってるな?」
憲剛は楽しそうに聞いた。

「まぁ多少は勉強しましたから?」
真奈美は明憲の仕事を手伝う様になってから、簡単な事から勉強し始めていた。

「だが、今回は民事裁判だ」

「民事?」
窃盗は刑事事件で、逮捕、送検され、裁判となれば、刑事裁判になる。

「剛力家という家裁で行う」と憲剛が言う。

剛力家は何かあると、必ず家族揃って話し合う事になっている。真奈美の事も全て、憲剛が言う剛力家の家裁で決められた。

「早く行くぞ?審議が始まる!」
 


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