わたしを光へ。
もう電話は繋がっていなくて、声が聞こえてくる筈がないのに、耳の奥で彼の声が聞こえる気がする。
手は脱力して、重力のままにダラリと下げていた。
身体中の血液が抜けてしまったのではないかと錯覚するほど、冷たく感じた。
「美月?」
明らかにいつもとは違う様子の私を、氷室くんが不安そうに覗き込む。
「ごめん。先に戻るね」
このまま此処にいては、絶対に氷室くんに何かを悟られる。
今それを隠し通す自信も無かった。
「そんな真っ青な顔して、誰からの電話だったんだよ」
屋上を出ようとする私の腕を掴まれる。
無理矢理にでも聞かれたら、この現状から逃れたくて口を割ってしまいそうで。
私は黙るしか無かった。