彼のゴール、わたしの答え
それは、分かる。わたしの考えはある意味、自分のことしか考えていないワガママなものだ。わたしの選択肢は強制的に狭まっているけれど、彼と同じように自由に選べる状況だったとして、何を選ぶかはわからない。
「そうだね」
わたしの反応を見ながら、ゆっくりと話してくれる。
彼の胸に飛び込めたら、自分をもっと、許してあげられるんだろうか。
「だからこそ、検査してみようと思ったんだ。あると思っていた選択肢は、本当にあるのか。その上で俺はどうしたいのか考えないと、お前の頭は停止したまま動き出してくれそうにないから」
そっと、わたしの頭に手を置いて、やさしく滑らせていった。
ビクッとして彼を見やると、とろけそうな目で見つめられている。
視線を外したいのに、外すことができない。
どれくらい見つめあっていたのだかわからないが、視界の端に時計が見えた。
「そろそろ、結果がでるんじゃない?」
ハッとして、彼が立ち上がった。
「行ってくる。ここで待っていて」
念押しをして、クリニックに戻っていった。
彼の作戦は、成功だ。
頑ななわたしの頭は、今ぐらぐらと揺れ動いている。
結婚しないと決めていたけど、わたしはただ、これ以上傷付きたくないという、すごくすごく個人的な想いに、彼を巻き込んでいるだけなのかもしれない。
座る席からは、ちょうどクリニックが見える。
彼はどんな気持ちで診察を受けているんだろう。
どんな結果を、どんな心持ちで聞くんだろう。
わたしはなぜ、子どもが産めないんだろう。
唐突に、涙が溢れてきた。
自分が妊娠できないことなんて、もう十年以上前から決まっていて、さんざんその事で泣いてきたのに、まだこんなに泣くことができるだなんて。
悲劇のヒロインになんてなりたくないのに、わたしはまだ、こんなにも絶望してる。
ハンカチを顔に押しつけて、テーブルにふせった。
泣いているって、周りの人たちにはたぶん気付かれているだろうけど、でも、涙は止まらなかった。
泣き止め、泣き止め。そろそろ彼が帰ってくる。泣いてたのがバレるのは仕方ないとしても、泣いてる最中には会いたくない。
だからわたし、泣き止んで!