彼のゴール、わたしの答え
妹の親友の家に到着し、足元がおぼつかないので一緒に降りて部屋の前まで連れていった。そこで帰ろうとすると、腕を引っ張られて部屋の中に連れ込まれた。
『女の誘いを無視するなんてひどいマネ、しないですよね』
そう問い、妹の親友はどんどん服を脱いでいった。俺には戸惑いしかなく、確か、やめてくれと叫んだと思う。相手が怯んだところで外に飛び出した。
駅まで走り、妹に電話をした。お前の親友には失礼なことをしたかもしれないが、これ以上関わるつもりはない、と伝えた。あのときもっと詳しく説明しておけばよかったのかもしれない。そうすれば、誤解させることもなかったかもしれない。でも俺はあの時、その言葉しか伝えなかったのだ。
翌日、妹の親友から電話がかかってきた。妹から番号を聞いたと。関わるつもりはないと伝えたのに、なぜ妹は電話番号を伝えたのか。妹の親友が、俺に襲われたと嘘をついたのだ。
俺の言う『失礼なこと』は、妹の中で『手を出した』に変換され、責任を取れ、と言われた。
そうこうする間に、それを聞き付けた両親が、勝手に彼女に(俺の、本当の彼女に)どうやってか連絡を取り、新しい恋人ができたようだから、諦めてくれと告げた。
『そう、連絡があったのだけど』と震える声で電話があったのは、妹たちとの食事から三日後のことだった。俺はまだ出張中で、すぐに戻ることもできなかった。ただ、俺の言葉だけを信じてほしいと伝えるしかなかった。
出張から帰ると、俺の部屋には母がいた。半同棲状態だった俺の部屋からは、彼女のものが消え去っていた。『片付けておいたわよ』と言って、母は帰っていった。
片付けたって、何を?
アイツは、どこに行ったんだ?
混乱するしかなく、とにかく彼女のマンションに走った。インターフォンを押すと『外で話そう』と、部屋を出てきた。
顔を見れたことにまずは安心するも、幸せな会話がなされる気配はない。
近所の喫茶店で無言で向かい合ったが、沈黙を破ったのは彼女だった。
『まだ、五年も経ってないよ』
『わたしはあなたの言葉を信じるけど、ご両親はわからない』
『とりあえず当面、そっちには行かないでおくね』
至極まっとうで、反論の余地もない。
彼女の最初の言葉を思い出す。
『付き合っても、わたしたちに未来はない。子どもを産めないって最初からわかってる嫁なんて、ご両親が納得しないよ』