彼のゴール、わたしの答え
彼女を紹介してから、特に反対も賛成も 言われなかった。
結婚するには二人だけのことじゃないから、十年かけてちゃんと説得してねと、彼女にも言われていた。
俺たちさえ愛し合っていれば大丈夫だと、ちゃんと考えなかった俺のせいだ。
俺は、両親に改めて説明しにいった。
俺が結婚したいのは彼女だと。子どもは望めないが、今そういう夫婦は増えていること。血は繋がらなくても、養子をうけたいと考えていること。妹の親友には興味もなく、何と言われたか知らないが、触れてもいないこと。
しかし、両親は、特に母親は渋った。孫がほしい。他人ではなく、俺に顔の似た孫がいい、と。
俺は、最後の切り札を出した。彼女と一緒に行った婦人科で検査した際の診断書だ。俺の精子は活動量が少なく、妊娠させにくいらしかった。つまり、彼女以外の女性と結婚したとしても、俺の両親は孫を抱ける可能性が少ない。
その事実を伝えれば、両親だって受け入れてくれるとたかをくくっていた俺に、両親が言ったのは『試してからにしろ』だった。
意味がわからない。
だいたい、そんなの許す女性も、その親もいるわけないだろと伝えたが、妹の親友は、早くにご両親が他界しており、俺に好意を持っているから問題ないと言う。
御曹司だとか、跡継ぎだとか、そういうのが必要なお家柄でもなく、何でそこまで必死になるのかわからない。強いて言えば、母の実家は地方では権力者と言うか、大きい家ではあった。だから外面みたいなものを人一倍気にするタイプなのかもしれないが、そうはいってもあまりに非常識な提案に、とにかく拒否の意思だけ示して過ごしてきた。が、最後には会社にまで電話がかかってくるようになり、仕事にも差し障りが出かねない状況だった。
彼女には経緯も状況も全て話し、何度も何度も相談した。でも相談すればするほど、彼女の気持ちが遠退いていくのがわかった。そして最後にはこう言った。
『あのね、わたし、あなたのことがすごく好きみたい。だから、あなたの遺伝子は残してほしいって思ってる。わたしではない好きな人と結婚して、きっと子どもが授かるよ。わたしは、同僚として、友だちとして、見守りたい』
そして、俺たちは別れた。
結婚するには二人だけのことじゃないから、十年かけてちゃんと説得してねと、彼女にも言われていた。
俺たちさえ愛し合っていれば大丈夫だと、ちゃんと考えなかった俺のせいだ。
俺は、両親に改めて説明しにいった。
俺が結婚したいのは彼女だと。子どもは望めないが、今そういう夫婦は増えていること。血は繋がらなくても、養子をうけたいと考えていること。妹の親友には興味もなく、何と言われたか知らないが、触れてもいないこと。
しかし、両親は、特に母親は渋った。孫がほしい。他人ではなく、俺に顔の似た孫がいい、と。
俺は、最後の切り札を出した。彼女と一緒に行った婦人科で検査した際の診断書だ。俺の精子は活動量が少なく、妊娠させにくいらしかった。つまり、彼女以外の女性と結婚したとしても、俺の両親は孫を抱ける可能性が少ない。
その事実を伝えれば、両親だって受け入れてくれるとたかをくくっていた俺に、両親が言ったのは『試してからにしろ』だった。
意味がわからない。
だいたい、そんなの許す女性も、その親もいるわけないだろと伝えたが、妹の親友は、早くにご両親が他界しており、俺に好意を持っているから問題ないと言う。
御曹司だとか、跡継ぎだとか、そういうのが必要なお家柄でもなく、何でそこまで必死になるのかわからない。強いて言えば、母の実家は地方では権力者と言うか、大きい家ではあった。だから外面みたいなものを人一倍気にするタイプなのかもしれないが、そうはいってもあまりに非常識な提案に、とにかく拒否の意思だけ示して過ごしてきた。が、最後には会社にまで電話がかかってくるようになり、仕事にも差し障りが出かねない状況だった。
彼女には経緯も状況も全て話し、何度も何度も相談した。でも相談すればするほど、彼女の気持ちが遠退いていくのがわかった。そして最後にはこう言った。
『あのね、わたし、あなたのことがすごく好きみたい。だから、あなたの遺伝子は残してほしいって思ってる。わたしではない好きな人と結婚して、きっと子どもが授かるよ。わたしは、同僚として、友だちとして、見守りたい』
そして、俺たちは別れた。