彼のゴール、わたしの答え


「お疲れ。駅まで一緒にいこう」

「どうしたの? ずいぶん嬉しそうだけど」

「いや、今日は記念日だったなと思って」

「? ふーん。なんの?」

「お前に告った日」

十一年前の今日だ。

「……懐かしいね」

「俺は後悔してないし、今も気持ちは変わってないよ」

「言っても、結婚はもうできないでしょ?」

「でも、お前とは運命共同体みたなもんだろ」

「親友代表だとは、思ってるけど。……あ! そういえば、里子の受け入れ決まったんだ」

「何歳の子?」

「中一。大きい子だから、親って言うか、友だちになるのが最初の一歩なのかな」

「そっか、お前なら何とかなるだろ」

「最初はすごくもめるらしいけどね。どうなるかな」

「なんか、楽しそうだな」

「楽しいよ! 毎日楽しい。その子との面会も、これからのことを考えるのも楽しい」

「そう」

「あなたと話すこういう時間も、楽しいよ」

「俺もだよ」

「いつもありがとう」

「こちらこそ」

ふっと手が差し出された。改めて固く握手する。二人でなんだかくすぐったい気持ちになる。

「じゃ、また明日」

「おう。また明日」

改札で別々の電車に分かれる。
やっぱり、俺たちの日々にゴールなんてない。
これからも、ずっとずっと、続いていく。

おわり
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