彼のゴール、わたしの答え
仕事上では今もパートナーで、一番理解しあっている。未だに飲みにもよく行くし、頻繁に連絡を取り合う仲だ。
でも俺は、彼女と別れ、別の女性と結婚し、子どもが産まれた。
さすがに妹の親友ではなく、仕事の繋がりで出会った女性だ。
彼女とは真反対の性格だと思う。対等な関係を築いていたい彼女とは違い、妻になった女性は守ってほしいタイプ。でも、彼女と俺の関係はよく理解してくれていて、なんなら彼女と俺と妻の三人での付き合いみたいになっている。
「わたしは、彼女の盾みたいなものだから」
妻が俺に言った言葉が忘れられない。
俺の両親から彼女を守る盾が、自分なのだと妻は言う。
もちろん俺は不倫してる訳でもない。彼女とは信頼できる仕事のパートナーで、まぁ親友みたいなものだが、別れてからは肉体関係は一切なくなった。
でも、妻がいるから彼女との関係を保っていられるというのは、その通りなのかもしれない。
俺と別れてからも、彼女はずっとイキイキしている。悔しいくらいに仕事をこなし、颯爽と定時で帰る。
扱いづらそうにしていた後輩たちとの関係も、うまくのせて適度な距離を保っている。
輝いている。
そういう姿を見る度に、俺はこいつが好きだ、と思う。
フッと笑顔がこぼれて、幸せな気持ちで家に帰る。家には、愛する妻と子が待っている。そう、心から愛している家族だ。
十年前、彼女と夢見たゴールには辿り着けなかった。でも、そもそも人間関係にゴールなんてない。俺たちには、俺たちの未来が広がっている。