彼のゴール、わたしの答え

「以上です。何かご質問は?」

目を見開いてわたしを見ている。
ごめんね、と思う。
君のこと、わりと好きだったよ。癒しだし近い存在だって、確かに思ってた。だから、誰にでもする訳じゃないこの話も、しようと思えたんだと思う。
でもさ、君の子どもは可愛いに違いないから。わたしじゃない誰かと、愛を育みなよ。
口に出せない思いをごまかすために、パスタを食べる。

「冷めちゃうよ。食べたら?」

動けなくなっている彼に行動を促す。

「なんで、その話をしてくれたの」

「え?」

「そんな、誰にでも話してないだろ。なんで?」

「諦めてもらうにはこの話をするのが手っ取り早いかなと」

「お前と付き合ってきたやつは、みんなそれ知ってんの?」

「イヤ、さすがに誰かれかまわず伝えてはいないけど」

「付き合ってもいない俺に伝えたのは?」

「いや、だから、諦めてもらうために……」
「俺のこと、大切に思ってくれてるってことだろ」

「え?」

「うれしいよ、教えてもらえて」

なんでだか勝手に喜んでいる。
なんで? わたしの話聞いてたかな、この人。

「子どもはいらない。お前がとなりにいてくれたら、それでいいよ。だから、付き合って。いや、結婚してくれ」

……。
きっと、普通ならここでコロッといくんだろう。でも、この人はわたしの気持ちをなにもわかっていない。

「わたしはイヤだよ。子ども好きだし。育てたい」

「……は?」

「養育里親って知ってる? 事情があって育てられない実の親の代わりに、育てるってやつ。今、その手続きを進めてる」

「あ……、えっと……」

「わたしは子どもはいらなくないの。自分が産めないなら、産まれたけど事情がある子を育てていけばいいって思ってる。そこまでの覚悟ある?」

「子どもがいるなら、それを拒否するとこはないけど……」

「そうじゃないよ。実の子を産んでもらえる可能性があるはずなのに、その可能性を手放してまで、他人の子を育てられるの? ってこと」

「いや、えっ……と……」

「今まで考えたことなかったでしょう? それに、自分がよくても親御さん的には、そりゃやっぱり血が繋がっててほしいと思うよ。わたしの親は、子どもを産めないってわかってるから、里親の話も理解してくれて、楽しみにしてるけど」

わたしという存在は、荷が重いと思う。
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