彼のゴール、わたしの答え

わたしの返答を待たず、さっと室内に入っていく。ぼんやりしていたら、すぐに出てきた。

「よし、行くぞ」

腕をとられてずんずん進んでいく。

「ちょ、ちょ、待って、歩きづらい!」

捕まれた腕を振りほどいて体勢を立て直し、隣を歩く。

「話、聞こえてたんだろ」

一瞬なんのことかと思ったが、お菓子を買った帰りのことだ、と、思いあたる。

「ああ、急に残業しても、変だし。わたしに直接言わない限りは放っておく」

「強いね」

「違う。自分のことしか考えてないだけだよ」

ポーンという音と共にやってきたエレベーターはたまたま空だった。

「ますます、惹かれる」

「そう、ありがとう。でも気持ちには応えられません」

「……」

じとっとした目で見られたけど、わたしの考えは最初から変わってない。

「なに?」

「いや、落としがいがあるなって」

「落ちないよ。それにその言い方、ゲームの対象にされてるみたいで不快」

「そういう、ハッキリ言うところも、好き」

「そうですか。どうもありがとう。でも気持ちには応えられません」

同じ言葉を繰り返し、扉だけを見つめる。
ちょうど二階についたので、どんどん先を歩いた。

「待てって。ちょっと付き合え」

「どこに」

「病院」

「一人でいきなよ。子どもじゃあるまいし」

「婦人科で検査してみようと思って」

「はい?」

さすがに立ち止まった。婦人科って、何。

「精子の検査してみようと思って。でも一人で行くのはなかなかハードル高いから、一緒に」

はー?

「わたしは関係ないし、一人でいけば不妊で苦しむ世の女性の気持ちがわかっていいんじゃない?」

「婦人科に男一人でいくのはちょっと話が違うだろ」

「何にしても、一緒にはいかない。検査してどうするの? 俺も不妊の傾向があるから安心しろとか言いたいわけ?」

「自分の子どもを持てる可能性がどのくらいあるのか、知りたいだけ」

嫌がるわたしの腕を再びつかんで、タクシーに押し込まれた。
ぐいぐい来るとはいってたけど、こういうこと?

「この病院までお願いします」

病院の名前と地図が書かれているらしいメモを運転手さんに見せる。コイツ、用意周到だな。
昼間のあの会話からでここまで準備してるって……。
今度はわたしがじとっとした目で見た。
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