無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君お手製のスクランブルエッグとトースト、コーヒーの朝食をとって、私たちは一緒にマンションを出た。


彼のマンションは、オフィスを挟んで私の家とは反対側に位置している。
いつもとは違う通勤経路。
電車の窓の外を流れる景色も、見慣れなくて新鮮だ。


朝起きて、身支度をして、会社に行く。
普段と変わらない日常に、今朝は劇的な変化が生じている。


今、私の目の前には、背の高い穂高君が、聳えるように立っている。
朝から彼と電車に乗って、向き合っているというのも現実感がなく、気恥ずかしい思いばかりが強まる。


朝の通勤時間帯、電車は満員で、私たちはたくさんの乗客に囲まれている。
電車がポイントを通過してガタンと揺れる度に、後ろの人の体重が背にかかる。
私は穂高君の上着をぎゅっと握りしめ、必死に耐えた。


「美紅、大丈夫か?」


すぐ頭上から、彼が心配そうに声をかけてくれる。
周りを憚っているのか、穂高君の声がいつもより低く聞こえる。
私は頷いて返事をしてから、「穂高君」と呼びかけた。


「私ね、やっぱり、あの企画諦めない」


電車の揺れに任せ、彼に身を委ねるような体勢で、コソッと呟く。
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