無愛想な同期の甘やかな恋情
穂高君が顎を引いて私を見下ろし、「え?」と短く聞き返してくる。


「原料の調達が難しいなんて、そこまで考えてなかったけど。それがハードルになるなら、企画案、調整してみる」


早口でそう言って、彼の上着を握る手に力を込めた。
頭上から、小さな吐息の音が聞こえる。


「まったく、お前は……」

「私たち、『名コンビ』だよね? 私と穂高君なら、難しくても乗り越えられるって自信があるから」


私も喉を仰け反らせて見上げると、穂高君と宙で視線がぶつかった。
彼は目を細めて、困ったように微笑む。


「もうただのコンビじゃないって自覚はある?」


悪戯っぽい目で確認され、私は一瞬虚を衝かれてドキッとしてしまう。


「も、もちろん」


胸を張って答えたいところだけど、この満員電車の中ではそうもいかない。
コソコソと、内緒話をする時のような声量で、声にも力は込められない。
それでも、私の意思が穂高君にちゃんと伝わったのは、彼が嬉しそうに笑うからわかる。


その時、ガタンと、電車が一度大きく揺れた。
私は後ろからドンと押されて、足の踏み場を変えられないまま、穂高君の方につんのめってしまい……。


「大丈夫か? いいから、俺に寄りかかってろ」
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