無愛想な同期の甘やかな恋情
午後八時。
すっかり日は落ち、廊下の突き当りにある大きな窓の向こうに、漆黒の深い闇が広がっている。
だというのに、穂高君の研究室は真っ暗で、ドアの隙間から光は漏れていない。
私は一瞬ドアを開けるのに怯み、躊躇ってしまった。


それでも、間中さんから、まだ彼は在室していると聞いた。
私は、一度大きく胸を広げて息を吸った。
そうやって自分を鼓舞して、思い切って二度ノックをした。


「穂高君。……いる?」


少し声を張って呼びかけてみたけど、応答はない。
私の声は、薄暗い廊下の空気に消え入ってしまい、再び静寂に包まれた。


もう一度呼んでみようかと迷ったものの、研究に熱中していて、なにも聞こえないのかもしれない。
私は、意を決してドアを開けた。


大きな機械に囲まれた狭い道を通り、視界に開ける研究室。
中は真っ暗闇かと思っていたら、隅の実験テーブルの上だけ、天井の照明が灯っていた。


穂高君は、その下にいた。
こちらに白衣の広い背中を向けて座っているから、ここからではなにをしているかわからない。


私は、そっと中に進んだ。
思った通り、穂高君はよほど集中しているのか、私が近寄っても気付かない。
それでも、この距離まで近付いてみれば、顕微鏡を覗き込み、記録を取っているのだとわかった。
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