無愛想な同期の甘やかな恋情
彼の方は各発表者の話に黙って耳を傾けるだけで、一度も私と目が合うことはなかった。
そして、一時間の会議が終了して、みんながわらわらと立ち上がる。


「また来週」と声をかけ合って会議室から出て行くみんなを横目に、穂高君は急ぐ様子もなく、ゆっくりとレジュメを片付けている。
私は一度ゴクッと唾を飲み、意を決して彼に歩み寄った。


「ほ、穂高君」


ちょうど椅子から腰を浮かしたタイミングで声をかけた私に、彼が「ん?」と斜めに視線を上げてくる。


「なに」


短く聞き返しながらしっかりと立ち上がった穂高君を、今度は私が喉を仰け反らせて見上げる。


「あの。話したいんだけど」

「会議中に言わないってことは、仕事の話じゃなさそうだな」

「わ、私とは、仕事以外の会話は必要ない?」


目を伏せ、溜め息混じりの彼に、私はムキになってそう言い返した。


「別に、そんなこと言ってない。で、なに?」


穂高君は、背筋をピンと伸ばして、そう言って私を促す。
私は無意識に辺りにサッと視線を走らせた。


私と穂高君がやり取りをしている間に、他のメンバーたちは誰もいなくなっていた。
中会議室のドアは開け放たれているけど、今なら、誰の耳も気にせずに済む。


「この間、私がラボにお邪魔した時、穂高君言ったでしょ?」

「……? なんだっけ」
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