無愛想な同期の甘やかな恋情
『最初が間中さんだったら、お前と名コンビって言われるのは、間中さんだったとしても?』


穂高君本人からあんなことを言われて、蒸し返したくなくても、私も『どうしてあの時』と考えてしまったのは確かだ。


「……ねえ、新井さん」


誰かに揺れる心を止めてほしくて、私は半ば縋るような気分で、新井さんに声をかけていた。


「はい?」

「もし。もしも、だけどさ。『AQUA SILK』の研究主任が、穂高君じゃない、別の人だったとしたら……」


私は、自分の中で言葉を探り、躊躇いがちに切り出した。
新井さんは、「え?」と言葉を挟んでくる。


「そうしたら、今の『AQUA SILK』は、どうなってただろう?」


はっきりと質問したのに、なにか迷いがこもっているのを、自覚していた。
新井さんにとっては、私の質問は想定外だったのだろう。
鳩が豆鉄砲を食らったように、大きく大きく目を見開いて……。


「そこ、『もしも』、必要ですか?」

「え?」


胸を張って強気で訊ね返されて、私の方が口ごもった。
ふんわりした雰囲気で、まだ新人気分が抜けていないと思うこともある彼女が、今は妙にキリッとした表情を見せる。
< 34 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop