無愛想な同期の甘やかな恋情
「そうだよ。歩武は、『AQUA SILK』の研究なら、寝食忘れて無茶するから」

「そんな。知ってたら、飲み会の席で軽くお願いするとかしなかったのに」

「あ、そうなの? でも、どっちにしても、『AQUA SILK』絡みなら、歩武の仕事だしね」


午前帰りが続こうが泊まりになろうが、研究員にとっては大したことじゃない、と言いたげな間中さんに、私はキュッと唇を結んだ。


「……そんな無茶するって知ってたら、ちゃんと企画書で調整依頼出すべきだった」


私は、お酒の席で安易に頼んでしまったことを悔やんで、ポツリと呟く。


「企画部長印が押された正式な依頼だったら、穂高君も実験スケジュールを組んで、対応できたんですよね?」


上目遣いで間中さんに確認すると、彼はポリッと頭を掻いて「ああ」と頷いた。


「まあ、そうだね。ラボのスケジュールとして組まれれば、他の研究員や補助員に任せることもできる」

「そうですよね……。はあ」


私は自己嫌悪に陥りながら、溜め息をついた。


「だったら、せめて、夜食の差し入れ、買ってから来ればよかった……」


しゅんと肩を落とす私に、間中さんはきょとんと目を丸くしてから、ブブッと豪快に吹き出して笑った。
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