見上げる空は、ただ蒼く
迷惑かけてばかりで可愛くもない
私のことを大切にしてくれる
紗綾さんが私にとっては
とても不思議だった。

心的外傷後ストレス障害の悪化が
今回、倒れた原因なのかな。

そこまで考えたところで、奏が
私に話しかけてきた。

「結乃。大丈夫か......?」

私は軽く微笑んで頷く。
奏の目の端が心なしか少し赤く
染まっているように見える。

もしかして、泣いてたのかな。

「良かった......。」

私の表情を見てほっとしたのか
奏は病院ベッドの上の私を
そっと抱き締めてくれた。

「結乃が遠くに行ってしまう
ような気がして、心配してた。
このまま死ぬかもしれないって。
俺、初めて結乃が消えるかもって
いう状況に直面して怖かった。」

その言葉に、奏がどれだけ私を
心配してくれていたのかが分かる。

「ありがとう、奏。あの、劇は
結局どうなったの。今はたぶん
私が倒れてから1ヶ月も経って
しまっているんだよね。」

私は聞きたかったことを尋ねた。
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