涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。
奏がバカみたいにはっきり似合うって言うから、悩んでるのがバカバカしくなって着てみた。
そしたら無言でどっか言って、
「いま着てるやつください」
「かしこましました〜」
「えぉぇっ?!ちょっちょちょっとカナデ?!なにしてんの!!頭大丈夫?!」
「ごめんなさい、いらないです!!」
バカみたいなこと言うから、すっごい焦ってすぐ着替えた。
「……まじかわいい」
試着室をでたあとに真顔で褒められて、堪えきれずに笑ってしまう。
「いまかよっ」
もう気づいている。
奏が今日、まじだってこと。
だけど、
「返せないよ…お金…こんな簡単に要らないもの買わなくていいから、空なんかのために。お金使わなくていいから。もったいないよ…もう帰ろう」
返せないんだよ、なにも。
次は空が奏の手を引いた。
のに、くんっと立ち止まって動かない。
重くて進めない。
「もったいないとか言うなよ」
声を聞いた途端、あ、怒ってるなって思った。
「要らなくねぇよ」
少し震えた声は、悲しいと言っているように聞こえた。