恋する耳たぶ
「これ、でしたよね」
耳元にあてられた大ぶりのイヤリングは、普段の私ならちょっと遠慮してしまう華やかなデザインだけれど。
きっと今日は、これくらいがちょうどいい。
「はい、ありがとうございます」
にっこり笑って肯定の意を表すと、女性は鏡に映る私を見つめて満足そうに微笑んだ。
「きれいですよ」
「いや、あはは……」
「大丈夫。ちゃんときれいにできてます」
笑い混じりで言われて、促された私は立ち上がり、壁に取り付けられた鏡の前に立つ。
大きな……本当に大きな、これまで私が他で見たことのない大きな鏡。
一般的なドア2枚分くらいのそれは、いつもと違う、ボリュームのある服を身に着けた私の全身をきちんと全部、頭の先から足の先まで全部、余すところなく映しだした。
「ああ、確かに……」
さっきまで見ていた普通サイズの鏡で見た私の顔も、いつもとは違っていたけれど。
馬子にも衣裳というやつなのか、鏡に映った私はまるで別人。