恋する耳たぶ
さっき確認した通り、今日、私の顔に施されたメイクは、これまでの人生で初めてというくらいに、時間をかけて丁寧で完璧なもの。
普段は適当にまとめるか、そのまま下ろしておくだけの髪もきれいにふんわりとまとめられて、その上には造花の小花でできた輪っかまで乗せられている。
そして、何より違うのは、首から下。
普段は絶対に着ることのない服……いや、衣装、いや……これはドレス……ドレスだ。
しかも、ただのドレスじゃなく、ウエディングドレス。
つやつやですべすべした生地でできていて、キラキラした何かがたくさんついたコレは、私の知っている“服”とは違う、“ドレス”というものだ。
大事なことなので、もう一度、繰り返す。
ドレスは服ではない……ドレスだ。
そして、中に仕込んだ体のラインをきれいに見せるコルセット。(歴史上の遺物じゃなく、この現代でも、こんなものは本当に存在していたらしい)
初めて見たコレで、ぎゅっと締め上げた私の体には、見たこともない凹凸ができあがり、そのおかげで、アラ不思議。
今や、鏡に映る私はどこか全然違う国の、お姫様になったように見える。