血で愛してるの文字を書く

だいぶ話していただろう。
もう大人しい女の子の皮を被る必要がなくなった私は、彼女との会話もスムーズに
楽しむことができた。
「ばいばい雪乃!!また後で連絡するぅ〜!」
肩を並べて住宅街まで向かい、
笑顔で手を振る彼女を見送った。
まるで今日は何もなかったかのように
感じてしまう程、彼女はいつも通りだった。


家へと着き、母に
「…ただいま。」
と告げると、すぐに自分の部屋へこもる。
彼女から連絡が来ていないかを確認する。
【今日まじありがと〜ね!!めっちゃ楽しかった〜!!⠀】
あぁ、幸せだ。笑みがこぼれ落ちる。
鼻歌を歌いながら彼女に返信を打とうとする。
その時だった。
「××!!×××××!!!」
甲高い声が聞こえる。いつもよりかなり早い時間。
窓を開け、言葉を聞き取ろうと試みる。
「なん…たしより…やく帰っ…ないの!!!」
多分、なんで私より早く帰ってこないの、だ。
なんて自己中心的な、と呆れつつも、
彼女の助けを求める悲鳴に耳を傾ける。
「もう…してママ!!!」
彼女の叫び声が聞こえる。その声はいつになく悲痛で、
耐えられなくなった私は窓を閉め布団に潜った。


_次の日から、彼女は学校へ来なくなってしまった。

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