血で愛してるの文字を書く
_梨花side
朝。夏だというのに袖の長いシャツを切る私は、
「腕太いから隠したいの〜」
と母に笑いかけた。
先程から鼻歌を歌っている母は、今日は仕事が休みらしく
機嫌が良さそうだ。
「梨花は充分痩せてるじゃない?」
なんて気持ち悪い戯言を吐くくらいだった。
「もぉ、恥ずかしいからやめてよ〜」
と私がヘラヘラ笑うと、母は微笑んだ。
まるで幸せな家庭かのような風景に違和感を覚える。
この人は昨夜の事を何も覚えていないのだろうか。

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