血で愛してるの文字を書く

原因は、母の仕事先での失敗だった。
苛立った様子で帰宅した母に、私はおやすみとだけ告げ、部屋へ上がろうとした。
ただ、それだけだった。
「…なんで。」
普段よりも低い母の声に嫌な予感がし、振り返る。
母は下を向き、震えていた。
「なんで私を慰めてくれないの?!」
悲鳴にも聞こえるような叫び声。
…あぁ、こうなってしまったからには、もう私の声は届かない。
後は母の気持ちが晴れるまで、ひたすら耐えるだけだ。
…汚い罵詈雑言を浴びせられる。
「なんでなんでなんでなんでなんで!!!」

「私を助けるのがお前の役目だろ!!!」
「お前なんか産まなきゃよかった!!!」
ヒステリックに声を荒らげて髪を鷲掴みし、
涙でグチャグチャになった私の顔を一瞥すると、
怒りに任せて床に叩きつける。
「死ね!死ね!死ね!死ね!」
倒れた私の腹部をすかさず蹴り倒す。
吐き出した嘔吐物を眺めながら、言葉を絞り出した。
「ごめんなさい…愛してるよ…」

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