血で愛してるの文字を書く

彼女との連絡が途絶えてから、
もう一週間が経とうとしていた。
蛻の殻のようになってしまった私は、
全てにおいて無気力になり、学校へも行かず、
ただ一日部屋で彼女とのトーク画面を見つめていた。
心配してくれる母親にも罪悪感すら起こらないくらい、彼女の事しか考えられない。
彼女の家から叫び声が聴こえる事も
もうなくなっていた。
ふと、ポーチの中からカミソリがはみ出ている事に気が付く。
流れるようにそのカミソリを取り出すと、
手首に押し当て引っ張ってみた。
スーッと赤い線が浮かび上がり、丸い形の血が何箇所にも現れる。
彼女の姿を重ねるように、赤い線をなぞってみると
まるで彼女になったようで少し嬉しくなった。
手に付いた血を拭き取ろうと立ち上がると、
ピコン、と軽快な通知音が鳴る。
彼女からかもしれない、と思い即座に携帯へと飛び付くと、ロック画面には
新着メッセージが1件あります。とだけ示されていた。
急いで画面を開く。
携帯に血が付着したが、そんな事を気にしている場合ではなかった。
【⠀今からうちこない〜??】
やはり彼女からだ!!
すぐに行く、と返事を返すと、
夜遅くに出かける娘を心配する母親の声にも
気が付かず家を飛び出した。
彼女から返信が来た!!!
私は彼女に捨てられていなかった!!!
彼女の家まで走る私は、喜びを全身で体現する犬のようだっただろう。
…が、彼女の家の前に着くと、
今の彼女の状況が異常であるという事を
嫌でも思い出す事になる。
呼び出された彼女の家は、どこにも灯りがついておらず、異様な雰囲気を醸し出していた。
恐怖が私を蝕む。だが、
彼女に会いたいという気持ちに勝る事はなく、
私はインターフォンを押した。

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