恋のはじまりは突然に
「結奈ちゃん、だっけ」
「あ、はい」

途中で言葉が出てこなくなり、黙っていると、蓮司じゃない男が私の名前を呼び何故か清美の隣に座った。

「ほら、蓮司も結奈ちゃんの隣に座って!」
「あ?意味分かんねぇよ。つか、何でお前は普通に座ってんだよ」

本当に何で普通に着席しているのか私も聞きたい。

でも清美を見ると、さっきまでの威勢はどこへやら。彼の隣で、ただモジモジしていた。

「いいから座れって。あ、すみませーん!僕たち、こっちの席に移るんでー!」

……清美の男バージョンが現れたみたい。というか、そんなの勝手に言ったら、蓮司って人キレちゃうんじゃ……。

「おい、奏多。勝手なことしてんじゃねぇよ」
「いいから座りなよ」
「………」

すると舌打ちはしていたけど、彼は私の隣にドカリと座った。

あれ……?素直に言うこと聞くんだ。奏多(かなた)って人、口調優しかったと思うんだけど。
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