恋のはじまりは突然に
「た、確かに……舌打ちとか怖いし、そうやって見下ろされると、何も言えなくなるから嫌だけど」
「でしょ?でしょー?ほら、結奈だって同じなんだから!!」

清美が自慢げに、彼に向かって言葉を投げたんだけど、私にはまだ続きがあって。

「でもね、清美。私は、誰にでも優しい人より、私だけに優しい人がいいなって」
「はぁ?!」

私の続いた言葉に清美が眉間にシワを寄せ、前のめりになって私に近付いた。

「だ、だってさ。みんなに優しくして、ライバルが増えたら嫌だもん……何の取り柄もない私はすぐ捨てられちゃうから」

私だって二十歳にもなるから、彼氏だっていたこともあるけど、高3の時に付き合っていた彼氏にフラれて、その彼の新しい彼女はすごく美人で。

あぁ、結局顔なんだろうなって。だったら、私だけに優しい彼だったら、誰も近寄ってこないんじゃないかなって……。

「結奈、まだアイツのこと引きづってんの?新しい恋するんじゃなかったのー?」
「それはっ、したい、けど……」

その高3の時に付き合っていた彼は、誰にでも優しい人で、私たちが付き合っているのを分かった上で告白してきた女の子のほうに気持ちがいっちゃったんだ。

新しい恋はしたいけど……今年こそはチョコを渡す相手が欲しいなと思っていたけど……あれが原因で臆病になってしまったのは間違いないんだよねぇ。
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