【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
先ほどまでカヤを捕まえていた男が、目の前から忽然と姿を消していた。
(な、なに……!?)
慌てて男が吹っ飛んでいった方を見ると、黄白色の馬と、それに跨る人間の姿が目に飛び込んできた。
そしてその近くには、顔を押えて悶えている男の姿が。
なんと、リンが男の顔面を蹴り飛ばしたようだった。
ミナトは駆け抜けていくリンから飛び降りると、一瞬でカヤの前に立ち、剣を抜いた。
「てめえら、何してんだコラ!」
大声で言い放ち、カヤを庇うようにして立つミナトに、安堵の涙が出そうになった。
「ミ……ミナトぉ……」
「どんだけ人気者だよ、お前。さっさと立て」
皮肉交じりに笑いながら、ミナトがそう言った。
しかしその眼は険しく目の前の男達を睨んでいる。
カヤは慌てて立ち上がる。情けなくも膝が震えていた。
「ってめえ、よくもやりやがったな!」
左方からそんな声が聞こえ、ハッとした。
リンに吹っ飛ばされた男が、剣を振りかぶりながらこちらへ走って来る。
鼻は変な方向に曲がり、赤く腫れあがっていて、鼻からも口からも大量の血が滴っていた。
「ひっ」
「下がれ!」
思わず後ずさったカヤとは裏腹に、ミナトが一瞬で男の前に躍り出た。
――――ガギィン!
鋭い音と共に、ミナトの剣が男の剣を受け止める。
そして息付く間も無く、ミナトの右足が男の腹にめり込んだ。
「ぐはあっ……!」
体重の乗った蹴りが、大の男をまるで子供のように呆気なくふっ飛ばす。
地面に倒れ込んだ男は、もうピクリとも動かなかった。
「脳天踏み潰さねえでやっただけ有り難く思えや」
そう吐き捨てたミナトは再びカヤの前に立つと、男達に向かって脅すように剣先を向けた。
「お前ら誰だ?その物騒なもん、どこで手に入れた?」
訝し気な問いに、素直に答える者は勿論居ない。
と言うよりも、突然稲妻のように現れたミナトの存在に、誰もが戸惑いを露わにしていた。
「……この男……中委の……」
「翠様の所の……ミナトじゃないか……?」
ぼそぼそとした会話がカヤの耳にも届いた。
(ミナトの事を知っている……?)
加えて、どこで手に入れたのかも分からない武器も持っている。
この国ではただの村人は、そんなもの持つ事すら許されていない。
カヤは、ふととある考えに至った。
この男達は、屋敷に近しい者、或いはそれ相応の身分の家の者ではないだろうか?
「……ああ成程な。見覚えあると思ったわけだ」
ミナトがぽつりと言葉を落とした。
「てめえら、膳の手下共だな?」
どうやら図星だったらしい。
何人かの男達の肩が、ピクリと揺れたのだ。
(な、なに……!?)
慌てて男が吹っ飛んでいった方を見ると、黄白色の馬と、それに跨る人間の姿が目に飛び込んできた。
そしてその近くには、顔を押えて悶えている男の姿が。
なんと、リンが男の顔面を蹴り飛ばしたようだった。
ミナトは駆け抜けていくリンから飛び降りると、一瞬でカヤの前に立ち、剣を抜いた。
「てめえら、何してんだコラ!」
大声で言い放ち、カヤを庇うようにして立つミナトに、安堵の涙が出そうになった。
「ミ……ミナトぉ……」
「どんだけ人気者だよ、お前。さっさと立て」
皮肉交じりに笑いながら、ミナトがそう言った。
しかしその眼は険しく目の前の男達を睨んでいる。
カヤは慌てて立ち上がる。情けなくも膝が震えていた。
「ってめえ、よくもやりやがったな!」
左方からそんな声が聞こえ、ハッとした。
リンに吹っ飛ばされた男が、剣を振りかぶりながらこちらへ走って来る。
鼻は変な方向に曲がり、赤く腫れあがっていて、鼻からも口からも大量の血が滴っていた。
「ひっ」
「下がれ!」
思わず後ずさったカヤとは裏腹に、ミナトが一瞬で男の前に躍り出た。
――――ガギィン!
鋭い音と共に、ミナトの剣が男の剣を受け止める。
そして息付く間も無く、ミナトの右足が男の腹にめり込んだ。
「ぐはあっ……!」
体重の乗った蹴りが、大の男をまるで子供のように呆気なくふっ飛ばす。
地面に倒れ込んだ男は、もうピクリとも動かなかった。
「脳天踏み潰さねえでやっただけ有り難く思えや」
そう吐き捨てたミナトは再びカヤの前に立つと、男達に向かって脅すように剣先を向けた。
「お前ら誰だ?その物騒なもん、どこで手に入れた?」
訝し気な問いに、素直に答える者は勿論居ない。
と言うよりも、突然稲妻のように現れたミナトの存在に、誰もが戸惑いを露わにしていた。
「……この男……中委の……」
「翠様の所の……ミナトじゃないか……?」
ぼそぼそとした会話がカヤの耳にも届いた。
(ミナトの事を知っている……?)
加えて、どこで手に入れたのかも分からない武器も持っている。
この国ではただの村人は、そんなもの持つ事すら許されていない。
カヤは、ふととある考えに至った。
この男達は、屋敷に近しい者、或いはそれ相応の身分の家の者ではないだろうか?
「……ああ成程な。見覚えあると思ったわけだ」
ミナトがぽつりと言葉を落とした。
「てめえら、膳の手下共だな?」
どうやら図星だったらしい。
何人かの男達の肩が、ピクリと揺れたのだ。