【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
そこには、黄白色の馬と楽しそうに戯れるミナトの姿があった。
その顔は天地でもひっくり返ったのかと思うくらい、幸せそうに緩んでいる。
『リン』と呼んでいたのはこの馬の事だろうか。
「……んなっ、は!?お、まえら、なんで……!?」
二人に気が付いた瞬間、ミナトが飛び上がり言葉にならない言葉を吐いた。
「あ、やっぱりミナト。あの、リンちゃんの糞を分けてくれませんかー?」
可哀想なくらい動揺しているミナトを華麗に無視して、ナツナがのんびりと言う。
ミナトは顔を真っ赤にしながら慌てて馬から離れてこちらに駆け寄ってきた。
「な、なんでここに居んだよ!特にお前!」
ビシッと指さしてくるミナトだが、昨日の朝のような威厳はどこにも無い。
笑っちゃいけないとは分かっているが、どうしよう。
気を抜けば吹き出してしまいそうだ。
「いや、そっちこそ何してるの?兵だって言ってたけど、馬の世話係なの?」
必死に普通の顔をして問いかけると、ミナトは歯がみしながら答えた。
「うるっせえ、ちげーよ。自分が乗る馬は自分で世話するのが基本なんだよ。つーか馬の糞なんて何に使うんだ」
「肥料にするのですよー」
カヤの言葉を、ナツナが代弁してくれた。
「肥料だあ?……お前、まさか勝手にどこか耕すつもりじゃねえだろうな?」
じろりと睨まれながら『勝手に』と言われた事に対して、カヤはハッとした。
「え、もしかして森の土地って耕しちゃ駄目なの……?」
あんな所、土地としての価値が無さそうだから、てっきり大丈夫だと思っていた。
しかしもしかするとあの場所もこの国の、ひいては翠様の持ち物なのかもしれない。
焦るカヤに、ミナトは「森か……」と呟いた。
「別に、森の中なら何かを育てるのは禁止されてはいねえけど……」
その言葉に安堵の溜息を吐く。
だがミナトの歯切れの悪い言葉が気にかかった。
「けど、何?」
「この国で勝手な事すんな。特にお前は」
またそれか、と思わず溜息が出た。
「禁止されてないのに、何が駄目なの?」
「禁止されてるされてないの問題じゃねえんだよ。お前が余計な事するのが問題なんだ」
カヤは一瞬言葉止めた。
『お前が』と言う部分が、酷く強調されていたからだ。
「……私じゃなかったら森で何をしようが、別に良いって事?」
「ああ、そうだ」
呆れた理論に閉口する。
(この男、なんでここまで私の事が気に入らないのだろう?)
初めて会った時から、なんなら口を聞く前から既に嫌われていたようだけど、こいつに対して何か迷惑をかけた覚えなんて一度も無い。
一体全体、どうしろって言うのだ。
「もーミナト。カヤちゃんにそんな意地悪な事を言うのは止めて下さいっ」
ナツナが抗議の声を上げた。
「意地悪って……あのなあ、そうじゃなくて……」
呆れたような声を出し、ミナトが口を開きかけた時だった。
「……おーい…ミナト……!」
遠くの方から、何やらミナトを呼ぶ声が聞こえた。
3人が一斉に振り返ると、あちらの方から大きな図体の人がのしのしとやってくるのが見える。
この村に初めて来た時、翠様の横に居たタケルという男だった。
そういえばミナトはタケルの部下だと言う事を思い出す。
「馬の世話は程ほどにしておけ!祭事の話し合いを始める時間だぞー!」
「はい、申し訳ありません!すぐ行きます!」
タケルの大きな声に、ミナトが鋭く返事をして走り出した。
その顔は天地でもひっくり返ったのかと思うくらい、幸せそうに緩んでいる。
『リン』と呼んでいたのはこの馬の事だろうか。
「……んなっ、は!?お、まえら、なんで……!?」
二人に気が付いた瞬間、ミナトが飛び上がり言葉にならない言葉を吐いた。
「あ、やっぱりミナト。あの、リンちゃんの糞を分けてくれませんかー?」
可哀想なくらい動揺しているミナトを華麗に無視して、ナツナがのんびりと言う。
ミナトは顔を真っ赤にしながら慌てて馬から離れてこちらに駆け寄ってきた。
「な、なんでここに居んだよ!特にお前!」
ビシッと指さしてくるミナトだが、昨日の朝のような威厳はどこにも無い。
笑っちゃいけないとは分かっているが、どうしよう。
気を抜けば吹き出してしまいそうだ。
「いや、そっちこそ何してるの?兵だって言ってたけど、馬の世話係なの?」
必死に普通の顔をして問いかけると、ミナトは歯がみしながら答えた。
「うるっせえ、ちげーよ。自分が乗る馬は自分で世話するのが基本なんだよ。つーか馬の糞なんて何に使うんだ」
「肥料にするのですよー」
カヤの言葉を、ナツナが代弁してくれた。
「肥料だあ?……お前、まさか勝手にどこか耕すつもりじゃねえだろうな?」
じろりと睨まれながら『勝手に』と言われた事に対して、カヤはハッとした。
「え、もしかして森の土地って耕しちゃ駄目なの……?」
あんな所、土地としての価値が無さそうだから、てっきり大丈夫だと思っていた。
しかしもしかするとあの場所もこの国の、ひいては翠様の持ち物なのかもしれない。
焦るカヤに、ミナトは「森か……」と呟いた。
「別に、森の中なら何かを育てるのは禁止されてはいねえけど……」
その言葉に安堵の溜息を吐く。
だがミナトの歯切れの悪い言葉が気にかかった。
「けど、何?」
「この国で勝手な事すんな。特にお前は」
またそれか、と思わず溜息が出た。
「禁止されてないのに、何が駄目なの?」
「禁止されてるされてないの問題じゃねえんだよ。お前が余計な事するのが問題なんだ」
カヤは一瞬言葉止めた。
『お前が』と言う部分が、酷く強調されていたからだ。
「……私じゃなかったら森で何をしようが、別に良いって事?」
「ああ、そうだ」
呆れた理論に閉口する。
(この男、なんでここまで私の事が気に入らないのだろう?)
初めて会った時から、なんなら口を聞く前から既に嫌われていたようだけど、こいつに対して何か迷惑をかけた覚えなんて一度も無い。
一体全体、どうしろって言うのだ。
「もーミナト。カヤちゃんにそんな意地悪な事を言うのは止めて下さいっ」
ナツナが抗議の声を上げた。
「意地悪って……あのなあ、そうじゃなくて……」
呆れたような声を出し、ミナトが口を開きかけた時だった。
「……おーい…ミナト……!」
遠くの方から、何やらミナトを呼ぶ声が聞こえた。
3人が一斉に振り返ると、あちらの方から大きな図体の人がのしのしとやってくるのが見える。
この村に初めて来た時、翠様の横に居たタケルという男だった。
そういえばミナトはタケルの部下だと言う事を思い出す。
「馬の世話は程ほどにしておけ!祭事の話し合いを始める時間だぞー!」
「はい、申し訳ありません!すぐ行きます!」
タケルの大きな声に、ミナトが鋭く返事をして走り出した。