【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「なんで、そんなっ……えっ?翠様?……え?え?」
疑問を安易に口に出してしまっても良いのかさえ分からない。
その状況に慄いていると、
「娘。あれはそなたの友では無いのか?」
落ち着き払った声で翠様が左側を指さした。
そちらに視線を送ると、そこにはミナトに寄り添われているナツナの姿が。
「ナツナッ……」
ハッとして呟く。
チラリと翠様に視線を送ると、まるで『行ってこい』とでも言うように微笑まれた。
カヤはおずおずと翠様の前を通り抜け、そしてナツナの元へ走った。
「ナツナ!」
大きな声で呼ぶと、ナツナが顔を上げた。
「カヤちゃん……!」
その眼は未だ濡れていて、頬には涙の跡があった。
それを眼にし、腹の底から捻じれたような罪悪感が沸き上がってくる。
カヤはナツナの隣に膝を落とし、勢いよく頭を下げた。
「ごめん、ナツナ!本当に、ごめんっ……!」
申し訳なさでナツナの顔が見れなかった。
震える声で謝罪をすると、ナツナが驚いたような声を上げた。
「どうして謝るのですか!?カヤちゃんは私を助けてくれようとしたのに!」
「だって、私のせいでナツナが巻き込まれて……それに、結局私、何も出来なかった……ごめん。怖い思いをさせて、ごめんね……」
喉の奥から絞り出すようにそう言った瞬間、
「カヤちゃんの馬鹿!」
そんなナツナの声と共に、体に衝撃が走った。
――――気が付けば、ナツナに思いっきり抱きしめられていた。
自分よりも小さな身体が、か弱いと思っていた腕が、信じられないくらいの力強さでカヤを包み込む。
「カヤちゃんは、本当に馬鹿ですっ……」
じわり。
肩口に温かな感触を感じ、カヤはナツナが涙を流している事に気が付いた。
「ナ、ナツナ……泣かないでっ……?」
どうして良いか分からずあたふたしてしまう。
ひとまずカヤは恐る恐るナツナの背中に手を回した。
するとカヤを抱きしめるナツナの腕の力が更に強くなったため、胸をなで下ろした。
どうやら自分の行為は合っていたらしい。
そのままナツナを優しい力で抱きしめていると、ふと目の前のミナトと眼が合った。
ミナトは、静かな眼差しで2人を見つめていた。
(そう言えばミナトにお礼を言ってなかった……)
その事に気が付いたカヤは、口を開きかけた。
「……だから言ったろ。お前は余計な事をするなって」
だが、その前にミナトがぽつりと言葉を吐いた。
「え?」
「お前みたいな奴は、どうしたって目立つんだ。ただの民なら咎められないような事でもお前がすると咎められるかもしんねえだろ」
その口調では怒っているわけでもない。
決して意地悪いものでもない。
「それでお前が傷付いたり、周りの奴らも巻き込まれたりしたら、辛い思いをするのはお前なんだからな」
衝撃を受けた。
諭すようなミナトの言葉に、カヤはようやく気が付いたのだ。
あの散々な態度の中に、ミナトが自分を心配してくれている気持ちが不器用に隠れていたことに。
疑問を安易に口に出してしまっても良いのかさえ分からない。
その状況に慄いていると、
「娘。あれはそなたの友では無いのか?」
落ち着き払った声で翠様が左側を指さした。
そちらに視線を送ると、そこにはミナトに寄り添われているナツナの姿が。
「ナツナッ……」
ハッとして呟く。
チラリと翠様に視線を送ると、まるで『行ってこい』とでも言うように微笑まれた。
カヤはおずおずと翠様の前を通り抜け、そしてナツナの元へ走った。
「ナツナ!」
大きな声で呼ぶと、ナツナが顔を上げた。
「カヤちゃん……!」
その眼は未だ濡れていて、頬には涙の跡があった。
それを眼にし、腹の底から捻じれたような罪悪感が沸き上がってくる。
カヤはナツナの隣に膝を落とし、勢いよく頭を下げた。
「ごめん、ナツナ!本当に、ごめんっ……!」
申し訳なさでナツナの顔が見れなかった。
震える声で謝罪をすると、ナツナが驚いたような声を上げた。
「どうして謝るのですか!?カヤちゃんは私を助けてくれようとしたのに!」
「だって、私のせいでナツナが巻き込まれて……それに、結局私、何も出来なかった……ごめん。怖い思いをさせて、ごめんね……」
喉の奥から絞り出すようにそう言った瞬間、
「カヤちゃんの馬鹿!」
そんなナツナの声と共に、体に衝撃が走った。
――――気が付けば、ナツナに思いっきり抱きしめられていた。
自分よりも小さな身体が、か弱いと思っていた腕が、信じられないくらいの力強さでカヤを包み込む。
「カヤちゃんは、本当に馬鹿ですっ……」
じわり。
肩口に温かな感触を感じ、カヤはナツナが涙を流している事に気が付いた。
「ナ、ナツナ……泣かないでっ……?」
どうして良いか分からずあたふたしてしまう。
ひとまずカヤは恐る恐るナツナの背中に手を回した。
するとカヤを抱きしめるナツナの腕の力が更に強くなったため、胸をなで下ろした。
どうやら自分の行為は合っていたらしい。
そのままナツナを優しい力で抱きしめていると、ふと目の前のミナトと眼が合った。
ミナトは、静かな眼差しで2人を見つめていた。
(そう言えばミナトにお礼を言ってなかった……)
その事に気が付いたカヤは、口を開きかけた。
「……だから言ったろ。お前は余計な事をするなって」
だが、その前にミナトがぽつりと言葉を吐いた。
「え?」
「お前みたいな奴は、どうしたって目立つんだ。ただの民なら咎められないような事でもお前がすると咎められるかもしんねえだろ」
その口調では怒っているわけでもない。
決して意地悪いものでもない。
「それでお前が傷付いたり、周りの奴らも巻き込まれたりしたら、辛い思いをするのはお前なんだからな」
衝撃を受けた。
諭すようなミナトの言葉に、カヤはようやく気が付いたのだ。
あの散々な態度の中に、ミナトが自分を心配してくれている気持ちが不器用に隠れていたことに。