【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
わざとらしく笑ったユタに、カヤとミナトはこっそりと眼を見合わせた。
「冗談では無いよ。腹の子は、私とカヤの子だ」
それでも翠が揺るぎなく言うので、ユタが助けを求めるようにカヤを見てきた。
"翠様は一体何を仰ってるの?"と訴えかけてくる瞳に、カヤはおずおずと真実を告げる。
「あの……本当なの」
ユタは見事に固まった。
「え……でも……あら?と言うことは、翠様は……女性じゃなくて……」
「ああ、私は男なんだ」
ユタが言いたかった事を、翠が代弁した。
しん、と凍るような沈黙が、その場を支配する。
ユタもナツナも両手で口を押さえ、硬直した瞳で翠を見つめていた。
「……今まで内密にしていて、すまなかったな」
誰も何も発さない静寂の中、翠が静かに口を開いた。
「あの……どうして私達にそのような事を……?私達が聴いて良いようなお話では無いと思うのですが……」
大いに戸惑った表情のナツナが言った。
「実は、折り入って二人に頼みがあるんだ」
「頼みって……す、翠様!?」
ナツナが飛び上がらんばかりに驚いた。
翠が唐突に、ナツナとユタに向かって深く頭を下げたからだ。
「どうかそなた達にカヤの支えとなって欲しい」
翠が二人に発したのは、そんな願いだった。
「そなた達を欺いていた上、こんな事を頼むのは大変に無礼だと自覚している。だが、そなた達が側に居てくれれば、それはカヤにとって非常に心強い事だと思うのだ」
一国の神官に深々と腰を折られ、ナツナもユタも恐れおののいていた。
「私の事は良く思わないだろうとは承知している。だが、どうかカヤの事は悪く思わないでやってほしい。カヤは純粋に二人の事を大切な友人だと思っている。その気持ちに決して偽りは無い」
それでも翠は一度も頭を上げる事なく、低姿勢かつ真摯な態度を貫いた。
そんな翠に、ナツナもユタも眼を見合わせる。
二人は小さく頷き合うと、やがてナツナが膝を折って翠に目線を合わせた。
「翠様。確かに貴方様が男性と聴き大変に驚いてはいますが……翠様は翠様です。私達の尊敬すべき神官様に代わりありません」
優しい笑みを浮かべながらそう言ったナツナに、ユタも頷く。
「そうです。それに翠様に頭を下げて頂くまでもありません。私達は喜んでカヤの傍に居ます」
ですからどうか頭を上げて下さいませ、とユタが言う頃には、カヤの涙はまたもや溢れ出てしまっていた。
「冗談では無いよ。腹の子は、私とカヤの子だ」
それでも翠が揺るぎなく言うので、ユタが助けを求めるようにカヤを見てきた。
"翠様は一体何を仰ってるの?"と訴えかけてくる瞳に、カヤはおずおずと真実を告げる。
「あの……本当なの」
ユタは見事に固まった。
「え……でも……あら?と言うことは、翠様は……女性じゃなくて……」
「ああ、私は男なんだ」
ユタが言いたかった事を、翠が代弁した。
しん、と凍るような沈黙が、その場を支配する。
ユタもナツナも両手で口を押さえ、硬直した瞳で翠を見つめていた。
「……今まで内密にしていて、すまなかったな」
誰も何も発さない静寂の中、翠が静かに口を開いた。
「あの……どうして私達にそのような事を……?私達が聴いて良いようなお話では無いと思うのですが……」
大いに戸惑った表情のナツナが言った。
「実は、折り入って二人に頼みがあるんだ」
「頼みって……す、翠様!?」
ナツナが飛び上がらんばかりに驚いた。
翠が唐突に、ナツナとユタに向かって深く頭を下げたからだ。
「どうかそなた達にカヤの支えとなって欲しい」
翠が二人に発したのは、そんな願いだった。
「そなた達を欺いていた上、こんな事を頼むのは大変に無礼だと自覚している。だが、そなた達が側に居てくれれば、それはカヤにとって非常に心強い事だと思うのだ」
一国の神官に深々と腰を折られ、ナツナもユタも恐れおののいていた。
「私の事は良く思わないだろうとは承知している。だが、どうかカヤの事は悪く思わないでやってほしい。カヤは純粋に二人の事を大切な友人だと思っている。その気持ちに決して偽りは無い」
それでも翠は一度も頭を上げる事なく、低姿勢かつ真摯な態度を貫いた。
そんな翠に、ナツナもユタも眼を見合わせる。
二人は小さく頷き合うと、やがてナツナが膝を折って翠に目線を合わせた。
「翠様。確かに貴方様が男性と聴き大変に驚いてはいますが……翠様は翠様です。私達の尊敬すべき神官様に代わりありません」
優しい笑みを浮かべながらそう言ったナツナに、ユタも頷く。
「そうです。それに翠様に頭を下げて頂くまでもありません。私達は喜んでカヤの傍に居ます」
ですからどうか頭を上げて下さいませ、とユタが言う頃には、カヤの涙はまたもや溢れ出てしまっていた。