【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
振り向けば、そこにはナツナ達と一緒に居るはずの弥依彦が居た。

とても疲れている。どうやらカヤを追ってきたらしい。

「え!?どうしたの!?」

「膳に付いていけって言われたんだよ!さっさと合図とやらを終わらせろ!」


二人はかなり集落に近い所まで戻ってきていた。

燃え広がった炎は森の木までをも燻らせており、カヤは弥依彦に急かされながら、その炎を導火線に付けた。

ジリジリッ……と言う音と共に、紐が段々と短くなっていく。

「投げろ!」

弥依彦の叫びに後押しされるようにして、カヤは黒い球を思い切り空に向かって放り投げた。



パァンッ―――――――!
黄色い閃光が、夜空を強烈に照らす。

それは一瞬辺りを昼間のように明るくした後、すぐに小さくなって消えた。


(お願い!気付いて、律っ……)

縋るように祈り、カヤ達はすぐさまナツナ達の元に戻ろうと、身を翻した。



「―――――……おい!なんだ、今の光は!」

「―――――……誰か向かえ!」

集落の方角から、そんな声と複数のバタバタと言う足音が近づいてくる。

「お、おい!気付かれた!行くぞ!」

焦った様な弥依彦に腕を引っ張られ、前につんのめるようにして走り出した。


カヤは、先程の声はかなり遠くから聞こえてきた事に気が付いていた。

恐らく逃げ切れるだけの距離はある――――はずだった。


突然目の前がパッと明るくなり、カヤ達は驚きに眼を細め、思わず立ち止まった。

目の前には見知らぬ男達が立っていた。

その内の一人が手にしている松明により、カヤも弥依彦も煌々と照らされていた。

嗚呼、なんという事なのだ。
集落を襲った男達は、森の中もウロついていたらしい。


「おい、さっきの光はこいつ等じゃないか!?」

「よし、捕らえろ!」

気を高ぶらせながら口々に言った男達は、腰から剣を抜くとカヤ達に向けた。

二人もそれぞれの剣を抜こうとした時、松明を持っていた男が、それを高く掲げながら訝し気な声を漏らした。

「……おい、この女……金の髪だ!」

ハッとして、思わず髪を押さえる。

しまった。ここ数年髪を隠す習慣が無かったから、頭を覆う布をすっかり忘れてしまっていた。


――――最悪の展開だった。

膳の言うように、この男達が金目当ての賊ならば、カヤは間違いなく何処かへ売り飛ばされるだろう。

そうすれば、もう翠にも蒼月にも会えなくなる。このまま、二度と。

一瞬で絶望しきった時、カヤの耳に『その名前』が届いた。


「クンリク様じゃないのか……?」


え、と小さく声を漏らせば、仲間の男達が口々に頷く。

「間違いない。クンリク様だ!」

「クンリク様だ!クンリク様が居たぞー!」

まるで森中に知らせるように、男が叫んだ。

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