【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「え……?」
驚き、思わず立ち止まったカヤを、兵が振り返る。
「いかがいたしましたか?」
「あの……この部屋じゃないんですか……?」
「違います。さあ、こちらへ」
促されたのは、カヤの部屋の奥に位置している部屋だった。
その瞬間、三年前の記憶がよみがえる。
確か、カヤの部屋の隣はミナトの部屋だったはずだ。
「う、そ……」
案内された部屋を覗いた瞬間、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
初めて見たミナトの部屋は、カヤの部屋と同じ造りだった。
無骨な岩肌が剥き出しとなっている殺風景さも、壁をくり抜かれて作られている寝台も、ほとんど違いは無い。
窓には、かつてカヤの脱走防止用に嵌められた鉄格子があり、そしてその鉄格子の真下には、ぐったりと座り込んでいるミナトの姿が―――――
「ミナトッ!」
カヤは叫び声と共に彼の元へ駆け寄った。
「ミナト!ミナト、大丈夫!?しっかりして!」
力無く項垂れているその肩を、乱暴に揺さぶる。
彼の両腕は固く縄で縛られており、見上げれば縄の先は窓の鉄格子に繋がれていた。
まさか、ずっと拘束されていたと言うのか?
「う……」
ピクリ、とミナトの肩が揺れた。
「ミナト……?」
泣きそうになりながらその顔を覗き込めば、死んだように閉じられていた瞼が、ゆるゆると押しあがった。
ぼんやりとした瞳がカヤを捕らえ、そして大きく見開かれる。
「琥珀……?嘘、だろ……?」
震える瞳が何度も瞬きを繰り返しながら、カヤを、そして蒼月を見やった。
「本当に、琥珀なのかっ……?俺、お前が……死んだって……兄上に聞かされて……」
酷く擦れた声。
らしくない、頼りの無い声だった。
ここでずっと一人で拘束されている間、どれほど辛い気持ちで居たのだろう。
それを考えると、カヤは胸が締め付けられた。
「ううん、生きてるよ。ちゃんと生きてる」
縄が食い込むミナトの手首ごと、しっかりと握り込む。
ぐっと力を込めれば、ミナトの顔がくしゃっと歪んだ。
「っ良かった……」
脱力したように項垂れたミナトは、次の瞬間には勢いよく顔を上げた。
「ていうかお前、なんでこんな所に居んだよっ!翠様はどうした!?あの人がお前をみすみす連れて行かせるような事はっ……」
カヤの顔を見た途端、ミナトが口を噤んだ。
一体どんな顔をしているのか自分では分からないが、きっと酷い顔なのだろう。
皮肉にも、ミナトの表情を見てそれが分かった。
「……何だよ、何があった?」
恐る恐る、と言ったようにミナトが尋ねた。
驚き、思わず立ち止まったカヤを、兵が振り返る。
「いかがいたしましたか?」
「あの……この部屋じゃないんですか……?」
「違います。さあ、こちらへ」
促されたのは、カヤの部屋の奥に位置している部屋だった。
その瞬間、三年前の記憶がよみがえる。
確か、カヤの部屋の隣はミナトの部屋だったはずだ。
「う、そ……」
案内された部屋を覗いた瞬間、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
初めて見たミナトの部屋は、カヤの部屋と同じ造りだった。
無骨な岩肌が剥き出しとなっている殺風景さも、壁をくり抜かれて作られている寝台も、ほとんど違いは無い。
窓には、かつてカヤの脱走防止用に嵌められた鉄格子があり、そしてその鉄格子の真下には、ぐったりと座り込んでいるミナトの姿が―――――
「ミナトッ!」
カヤは叫び声と共に彼の元へ駆け寄った。
「ミナト!ミナト、大丈夫!?しっかりして!」
力無く項垂れているその肩を、乱暴に揺さぶる。
彼の両腕は固く縄で縛られており、見上げれば縄の先は窓の鉄格子に繋がれていた。
まさか、ずっと拘束されていたと言うのか?
「う……」
ピクリ、とミナトの肩が揺れた。
「ミナト……?」
泣きそうになりながらその顔を覗き込めば、死んだように閉じられていた瞼が、ゆるゆると押しあがった。
ぼんやりとした瞳がカヤを捕らえ、そして大きく見開かれる。
「琥珀……?嘘、だろ……?」
震える瞳が何度も瞬きを繰り返しながら、カヤを、そして蒼月を見やった。
「本当に、琥珀なのかっ……?俺、お前が……死んだって……兄上に聞かされて……」
酷く擦れた声。
らしくない、頼りの無い声だった。
ここでずっと一人で拘束されている間、どれほど辛い気持ちで居たのだろう。
それを考えると、カヤは胸が締め付けられた。
「ううん、生きてるよ。ちゃんと生きてる」
縄が食い込むミナトの手首ごと、しっかりと握り込む。
ぐっと力を込めれば、ミナトの顔がくしゃっと歪んだ。
「っ良かった……」
脱力したように項垂れたミナトは、次の瞬間には勢いよく顔を上げた。
「ていうかお前、なんでこんな所に居んだよっ!翠様はどうした!?あの人がお前をみすみす連れて行かせるような事はっ……」
カヤの顔を見た途端、ミナトが口を噤んだ。
一体どんな顔をしているのか自分では分からないが、きっと酷い顔なのだろう。
皮肉にも、ミナトの表情を見てそれが分かった。
「……何だよ、何があった?」
恐る恐る、と言ったようにミナトが尋ねた。