【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
「今日は一日、翠様のところですか?」
首を傾げて聞いてくるナツナに、わざと大げさに頷いた。
「うん。占いをするとかなんとかで……見ておきなさいって言われたんだよね」
「ええ!?カヤちゃん、翠様の占いを見せてもらえるんですか!?」
仰天したように詰め寄ってくるナツナに、思わず半歩後ずさる。
手の中の御膳が危なっかしく揺れた。
「う、うん……でもナツナだって見た事あるでしょう?」
「無いですよ!祭事の時のお祈りは拝見した事ありますけど、占いなんて一度も!きっとタケル様くらいしか見た事ないはずです!」
目をキラキラしながら力説したナツナは「いいなあ、いいなあ」としきりに呟く。
その時だった。
背後から誰かが小走りで廊下を走ってくる音が聞こえ、
「おい、ナツナ―」
と言う声がした。
振り返れば、ミナトがこちらにやってくるのが見えた。
「ナツナ、薬草くれ。リンが少し怪我した……って、うわ。お前も居たのかよ」
カヤを目に止めた途端、ミナトの眼が不愉快そうに細まった。
「居ちゃ悪い?」
負けじとカヤもミナトを睨み返す。
「あら、それは大変ですね!少し待っていてくださいー」
ナツナが慌てたように薬草を取りに行き、その場には対して仲良くも無い二人が残された。
「……それ、翠様の朝飯だろ」
「そうだけど……何?」
「こんな所で油売ってないでさっさとお持ちしろよ。翠様に冷めた飯なんざ食べさせたら承知しねーぞ」
威圧感たっぷりに言って、ミナトはカヤを見下ろす。
――――あの日以来ミナトと会うのはこれで2度目だ。
1度目に顔を合わせたのは、翠の世話役になった日の夜だ。
カヤが翠の部屋への道順を覚えようと屋敷内をうろうろしていた時に、バッタリと鉢合わせたのだ。
その時にはすでにカヤが翠の世話役になっていた事を、ミナトは知っていたらしく。
開口一番の言葉は『身の程わきまえて、さっさと辞退しろ』だった。
お礼を言おうとしていたカヤは開いた口が塞がらず、結局その時は口喧嘩をして終わったのだ。
(……やっぱりミナトとは仲良くなれない。絶対に)
そう強く再確認させれらた。
「言われなくても持ってくよ」
ふんっと顔を反らし、翠の部屋へ向かって歩き出す。
しかし腹の虫が収まらないカヤは、ピタリと立ち上がってミナトを振り向いた。
「ミナト」
「あ?なんだよ」
「あんまり馬鹿みたいに過保護だと疎まれるよ。あんたの愛しいリンちゃんに」
嫌味たっぷりに言ってやると、ミナトの頬が赤くなった。
そのまま言い逃げすると「余計なお世話だ!」という声が追いかけきたので足早に台所を後にした。
首を傾げて聞いてくるナツナに、わざと大げさに頷いた。
「うん。占いをするとかなんとかで……見ておきなさいって言われたんだよね」
「ええ!?カヤちゃん、翠様の占いを見せてもらえるんですか!?」
仰天したように詰め寄ってくるナツナに、思わず半歩後ずさる。
手の中の御膳が危なっかしく揺れた。
「う、うん……でもナツナだって見た事あるでしょう?」
「無いですよ!祭事の時のお祈りは拝見した事ありますけど、占いなんて一度も!きっとタケル様くらいしか見た事ないはずです!」
目をキラキラしながら力説したナツナは「いいなあ、いいなあ」としきりに呟く。
その時だった。
背後から誰かが小走りで廊下を走ってくる音が聞こえ、
「おい、ナツナ―」
と言う声がした。
振り返れば、ミナトがこちらにやってくるのが見えた。
「ナツナ、薬草くれ。リンが少し怪我した……って、うわ。お前も居たのかよ」
カヤを目に止めた途端、ミナトの眼が不愉快そうに細まった。
「居ちゃ悪い?」
負けじとカヤもミナトを睨み返す。
「あら、それは大変ですね!少し待っていてくださいー」
ナツナが慌てたように薬草を取りに行き、その場には対して仲良くも無い二人が残された。
「……それ、翠様の朝飯だろ」
「そうだけど……何?」
「こんな所で油売ってないでさっさとお持ちしろよ。翠様に冷めた飯なんざ食べさせたら承知しねーぞ」
威圧感たっぷりに言って、ミナトはカヤを見下ろす。
――――あの日以来ミナトと会うのはこれで2度目だ。
1度目に顔を合わせたのは、翠の世話役になった日の夜だ。
カヤが翠の部屋への道順を覚えようと屋敷内をうろうろしていた時に、バッタリと鉢合わせたのだ。
その時にはすでにカヤが翠の世話役になっていた事を、ミナトは知っていたらしく。
開口一番の言葉は『身の程わきまえて、さっさと辞退しろ』だった。
お礼を言おうとしていたカヤは開いた口が塞がらず、結局その時は口喧嘩をして終わったのだ。
(……やっぱりミナトとは仲良くなれない。絶対に)
そう強く再確認させれらた。
「言われなくても持ってくよ」
ふんっと顔を反らし、翠の部屋へ向かって歩き出す。
しかし腹の虫が収まらないカヤは、ピタリと立ち上がってミナトを振り向いた。
「ミナト」
「あ?なんだよ」
「あんまり馬鹿みたいに過保護だと疎まれるよ。あんたの愛しいリンちゃんに」
嫌味たっぷりに言ってやると、ミナトの頬が赤くなった。
そのまま言い逃げすると「余計なお世話だ!」という声が追いかけきたので足早に台所を後にした。