【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
何を言われているのか分からず、カヤは瞬きを繰り返しながら、目の前の包みと、それからユタを交互に見つめた。
「……え?」
「き、昨日のお礼よ!花を探してくれたのと、かばってくれたの……良いから受け取りなさいよ!私と、ナツナからよ!」
顔に包みが押し付けられてしまいそうな勢いで言われ、カヤは当惑しながらその包みを受け取った。
少し軽いその包みの中からは、何やら柔らかな感触を感じる。
答えを求めて思わずナツナを見やると、彼女はくすりと小さく笑った。
「今朝、翠様のお祈りの後に2人で急いで探したのです。昨日の夜、ユタちゃんからご提案を受けまして」
「え、でも、なんでナツナまで……?」
「私が膳様に連れていかれそうになった時、カヤちゃん必死に止めてくれようとしたでしょう?あのお礼を、いつかしたいと思っていたのですよ」
「そんな……ユタも、ナツナも、そんなこと気にしないでよ……私まったく大した事してないのに……」
包みを見下ろしながら、困り果てて呟くと、ナツナがそっと肩に触れて来た。
目線を上げると、ナツナがいつもの優しい笑顔を向けていた。
「私、あの時とってもとっても嬉しかったんですよ。きっと昨日ユタちゃんも嬉しかったんです。だから、受け取って下さいな」
「ね?」と声を掛けられ、カヤはやっとの思いで小さく頷いた。
「是非開けてみて下さいな」
そう促され、震える指で包みを開ける。
どぎまぎしながら覗いたその中には、明るい色をした織物らしきものが入っていた。
それをゆっくりと取り出したカヤは思わず声を上げた。
「わあ、綺麗……」
それは、繊細な紋様が描かれた腰紐だった。
橙色と黄色を混ぜたような温かな色をしたそれは、カヤの手の中でひらひらと踊る。
「カヤちゃんの髪の色と合うかなあと思って、2人で相談してそれにしたのです。あまり高価なものじゃなくて申し訳ないのですが……」
すまなそうな声に、カヤは慌ててぶんぶんと首を横に振った。
じいん、と柔らかな思いが心に染み渡って、どうしようもなくなる。
誰かに、こうやって贈り物をしてもらえる日が『もう一度』来るとは、夢にも思っていなかった。
「……ありがとう」
ぎゅっ、と太陽の色をしたそれを胸に抱く。
「絶対、大事にする……本当に嬉しい、ありがとう……」
唇が震える。
喉の奥深くが痛くなる。
――――長い間枯れていた泉が、息を吹き返しそうになる。
「……カヤちゃん?」
戸惑ったようなナツナの声に顔を上げたカヤはギョッとした。
なぜか2人が食い入るようにして、こちらを見つめていたためだ。
「……え?な、なに?どうかしたの?」
あまりにも驚いたような眼で凝視されていた事に、カヤの方が驚いてしまった。
「あんたねぇ……どれだけ喜んでるのよ?そんな高価なものでもないのに」
そんな風にユタに言われ、カヤはようやく自分の頬が間抜けな程に緩んでいる事に気が付いた。
「……え?」
「き、昨日のお礼よ!花を探してくれたのと、かばってくれたの……良いから受け取りなさいよ!私と、ナツナからよ!」
顔に包みが押し付けられてしまいそうな勢いで言われ、カヤは当惑しながらその包みを受け取った。
少し軽いその包みの中からは、何やら柔らかな感触を感じる。
答えを求めて思わずナツナを見やると、彼女はくすりと小さく笑った。
「今朝、翠様のお祈りの後に2人で急いで探したのです。昨日の夜、ユタちゃんからご提案を受けまして」
「え、でも、なんでナツナまで……?」
「私が膳様に連れていかれそうになった時、カヤちゃん必死に止めてくれようとしたでしょう?あのお礼を、いつかしたいと思っていたのですよ」
「そんな……ユタも、ナツナも、そんなこと気にしないでよ……私まったく大した事してないのに……」
包みを見下ろしながら、困り果てて呟くと、ナツナがそっと肩に触れて来た。
目線を上げると、ナツナがいつもの優しい笑顔を向けていた。
「私、あの時とってもとっても嬉しかったんですよ。きっと昨日ユタちゃんも嬉しかったんです。だから、受け取って下さいな」
「ね?」と声を掛けられ、カヤはやっとの思いで小さく頷いた。
「是非開けてみて下さいな」
そう促され、震える指で包みを開ける。
どぎまぎしながら覗いたその中には、明るい色をした織物らしきものが入っていた。
それをゆっくりと取り出したカヤは思わず声を上げた。
「わあ、綺麗……」
それは、繊細な紋様が描かれた腰紐だった。
橙色と黄色を混ぜたような温かな色をしたそれは、カヤの手の中でひらひらと踊る。
「カヤちゃんの髪の色と合うかなあと思って、2人で相談してそれにしたのです。あまり高価なものじゃなくて申し訳ないのですが……」
すまなそうな声に、カヤは慌ててぶんぶんと首を横に振った。
じいん、と柔らかな思いが心に染み渡って、どうしようもなくなる。
誰かに、こうやって贈り物をしてもらえる日が『もう一度』来るとは、夢にも思っていなかった。
「……ありがとう」
ぎゅっ、と太陽の色をしたそれを胸に抱く。
「絶対、大事にする……本当に嬉しい、ありがとう……」
唇が震える。
喉の奥深くが痛くなる。
――――長い間枯れていた泉が、息を吹き返しそうになる。
「……カヤちゃん?」
戸惑ったようなナツナの声に顔を上げたカヤはギョッとした。
なぜか2人が食い入るようにして、こちらを見つめていたためだ。
「……え?な、なに?どうかしたの?」
あまりにも驚いたような眼で凝視されていた事に、カヤの方が驚いてしまった。
「あんたねぇ……どれだけ喜んでるのよ?そんな高価なものでもないのに」
そんな風にユタに言われ、カヤはようやく自分の頬が間抜けな程に緩んでいる事に気が付いた。