【完】絶えうるなら、琥珀の隙間
行きと同じように、誰も居ない廊下を翠と2人で走る抜ける。
「お、おいっ、今更だけど、これタケルとかに見つかったら……!」
「怒られるどころじゃ済まないだろうね!」
「だろうな!」
やけっぱちな様子の翠を振り返りながら、カヤは「大丈夫!」と声を掛けた。
「私の兄様ですとか言って誤魔化すから!祭事だし、肉親が遊びに来てたって可笑しくない……はず!」
「似ても似つかねえよ!」
「翠、話合わせてよね!ちゃんと私の兄様っぽく振る舞ってよ!」
「無茶を言うな、無茶を!」
言い合いしながらも屋敷の外に出たカヤたちは、真っすぐ広場へと走った。
先ほどと変わらず炎を上げる焚火を中心に、人々は踊っている。
相変わらずの賑わいは衰える事を知らないようだ。
どころか、途切れる事なく人々が集まってきていて、その輪はどんどん大きくなり続けていた。
もうナツナもユタもミナトも、どこに居るのか検討すらつかない。
予想以上だったらしい熱気に、隣で翠がぽつりと声を落とした。
「……すげえ」
大きく見開かれた瞳の中で、チロチロと炎が揺れている。
「踊ろう、翠」
力の抜けている腕をぐいっと引っ張ると、翠は当惑したようにカヤを見つめた。
「俺、踊った事なんか無いぞ」
「何言ってるの。朝ここで綺麗に踊ってたじゃん」
「あのなあ、あれは踊りじゃなくて、ただの舞で……」
「ああもう良いから、ほら」
なんやかんや言っている翠を引きずりながら、輪に近づく。
「あのね、私もまともに踊れないの。でもきっと、楽しんだもん勝ちなんだよ」
ユタが、ナツナが、ミナトが教えてくれた。
持っているしがらみなんて全部投げ捨てて、この場に身を委ねる。
大きく笑って、思うままに体を動かして。
(そうやって、精一杯楽しんで良い場所なんだ。勿論、翠だって)
またもや群衆の中に戻ってきたカヤは、翠と両手をしっかり握り合った。
「行くよ」
ぐいっと翠の手を引っ張って、音楽に合わせて踊り始める。
翠も一瞬遅れて地面を蹴った。
右に左に地を踏んで、回して、回されて。
慣れない二人は何度も人にぶつかっては謝って、それから眼を見合わせて笑い合う。
ひたすら踊り続けるうちに、翠が堪えきれないように笑い声を漏らした。
「ははっ、なんか信じられないな」
「へ、何が?」
「こうやって踊ってる事がだ、よ!」
「きゃあ!」
唐突に腰を引き寄せられ、カヤは翠の胸元に突っ込んだ。
「お、おいっ、今更だけど、これタケルとかに見つかったら……!」
「怒られるどころじゃ済まないだろうね!」
「だろうな!」
やけっぱちな様子の翠を振り返りながら、カヤは「大丈夫!」と声を掛けた。
「私の兄様ですとか言って誤魔化すから!祭事だし、肉親が遊びに来てたって可笑しくない……はず!」
「似ても似つかねえよ!」
「翠、話合わせてよね!ちゃんと私の兄様っぽく振る舞ってよ!」
「無茶を言うな、無茶を!」
言い合いしながらも屋敷の外に出たカヤたちは、真っすぐ広場へと走った。
先ほどと変わらず炎を上げる焚火を中心に、人々は踊っている。
相変わらずの賑わいは衰える事を知らないようだ。
どころか、途切れる事なく人々が集まってきていて、その輪はどんどん大きくなり続けていた。
もうナツナもユタもミナトも、どこに居るのか検討すらつかない。
予想以上だったらしい熱気に、隣で翠がぽつりと声を落とした。
「……すげえ」
大きく見開かれた瞳の中で、チロチロと炎が揺れている。
「踊ろう、翠」
力の抜けている腕をぐいっと引っ張ると、翠は当惑したようにカヤを見つめた。
「俺、踊った事なんか無いぞ」
「何言ってるの。朝ここで綺麗に踊ってたじゃん」
「あのなあ、あれは踊りじゃなくて、ただの舞で……」
「ああもう良いから、ほら」
なんやかんや言っている翠を引きずりながら、輪に近づく。
「あのね、私もまともに踊れないの。でもきっと、楽しんだもん勝ちなんだよ」
ユタが、ナツナが、ミナトが教えてくれた。
持っているしがらみなんて全部投げ捨てて、この場に身を委ねる。
大きく笑って、思うままに体を動かして。
(そうやって、精一杯楽しんで良い場所なんだ。勿論、翠だって)
またもや群衆の中に戻ってきたカヤは、翠と両手をしっかり握り合った。
「行くよ」
ぐいっと翠の手を引っ張って、音楽に合わせて踊り始める。
翠も一瞬遅れて地面を蹴った。
右に左に地を踏んで、回して、回されて。
慣れない二人は何度も人にぶつかっては謝って、それから眼を見合わせて笑い合う。
ひたすら踊り続けるうちに、翠が堪えきれないように笑い声を漏らした。
「ははっ、なんか信じられないな」
「へ、何が?」
「こうやって踊ってる事がだ、よ!」
「きゃあ!」
唐突に腰を引き寄せられ、カヤは翠の胸元に突っ込んだ。