御曹司は偽婚約者を独占したい
「ルーナを知っていてもらえて光栄だよ」
そう言って彼は微笑んだけれど、今年二十四になる私の世代でルーナを知らない女性はいないと思う。
実際、私もルーナのジュエリーのファンでもあった。
品質の高い素材にこだわり、シンプルでエレガントかつ、繊細なデザインが特徴的なジュエリーを数多く提供している。
元々はブライダル業界最大手の【With Wedding(ウィズ ウエディング)】が展開するブランドのひとつだったのだけれど、数年前に【ルーナ】のトップが変わって、新しいジュエリーブランドへと生まれ変わった。
もともとルーナは、ブライダルジュエリーのみを扱うジュエリーブランドだったらしい。
けれどトップが変わって以降、従来の方向性を一変させ、今ではファッション性の高いジュエリーを中心に展開している。
また、その宣伝方法も秀逸で、超大手が使うようなTVCMではなく、身近なSNSを使った広報PRとマーケティング戦略が一躍話題を攫った。
そして、それらすべてを指示した今のトップの手腕が、業界内では高く評価されているらしい。
その【ルーナ】のトップこそ、親会社である【ウィズ ウエディング】現代表取締役社長のご子息だ……というのは全て、先日見たニュース番組で流されていた話しだ。
でも今の話しだと、そのルーナのトップの秘書をしているのが窓際の彼……ううん、近衛さんだということになる。
これを驚いた以外の言葉でどう表現したら良いのか、今の私では表せない。