御曹司は偽婚約者を独占したい
「弁護士ではなく、秘書をしている」
「秘書……?」
渡された名刺を受け取って見てみれば、彼の名前らしきところの上には【社長付 秘書】という肩書きが書かれていた。
「近衛、悟(このえ さとる)……」
そしてこれが、彼の名前なのだろう。
名刺に落としていた視線を上げると、彼が穏やかに目を細めて私の考えを肯定してくれた。
「な、弁護士ではないだろう?」
「た、確かにそうですけど……。この〝Luna(ルーナ)〟って、まさかあの……ジュエリーブランドのルーナ、ですか……?」
「ああ。一応、そこの代表取締役社長の秘書をしているんだ。少し前にその社長が結婚して、色々フォローもしやすいようにと思ってこの近くに引っ越してきた」
言いながら、彼は駅前にあるタワーマンションを顎で指した。
多分、その少し前に引っ越してきた、というのが、彼がパレットに訪れるようになった約二ヶ月ほど前のことなのだろう。
だけどもうなんだか、色々なことが追いつけない。
だって、ルーナといえば流行に敏感な女性たちの間で、今一番と言っていいほど話題になっているジュエリーブランドだ。
銀座の一等地に本店があり、最近で言うと去年のクリスマスに発売されたジュエリーが、あらゆるメディアで話題になるほど大ヒットしていた。