御曹司は偽婚約者を独占したい
「まさか、この雨の中、傘もささずに店から走ってきたのか?」
「え……っ、あ……はい。傘を忘れちゃって。それで今、ここに傘を買いに来たんですけど──」
「バカだな。風邪を引いたら、どうするんだ。そんな姿になるくらいなら、俺を呼べばいいのに」
──え? と、首を傾げかけた瞬間、身体が彼の纏う甘い香りに包まれた。
今の今まで着ていたシャツチェスターコートを手早く脱いだ彼は、それを私に羽織らせたのだ。
突然のことに驚いた私は、ハッと我に返ってから改めて背の高い彼を見上げた。
「え、あ、あの、ダメですよ! 服が濡れちゃうし、これじゃあ近衛さんが寒いです!」
慌てて、コートを脱いで彼に返そうとした。
けれどそんな私を手振りで制した近衛さんは、視線を一瞬、私の身体に滑らせる。
「俺は別にいい。それに、着ていたほうが君の身のためだ」
「え?」
「本当にその格好で、コンビニに入るつもりだったのか? だとしたら、浅慮(せんりょ)すぎるだろう」
「それって、どういう……」
言いかけて、私はハッとしてから自分の身体に視線を落とした。
薄手のカーディガンは羽織っていたもののボタンのついていないタイプだし、前は開いている。
そのせいで中に着ていた白地のブラウスは濡れてしまい、見事に下着が透けて見えていた。