御曹司は偽婚約者を独占したい
「期間なんて大した問題ではない。好きだから一緒にいたい、そういうものだろう」
「そ、それは……っ。確かに、そうかもしれないけど……っ」
「事実、俺は美咲を大切に想っている。だから、他の誰にも触れさせたくないし、それは君も例外ではないよ」
「え……」
キッパリと告げられた言葉に、思わず自分の耳を疑った。
近衛さんが、私を大切に想っている? まさか、何かの聞き間違えだろう。
だって、私と彼は、ただ偽の婚約者を演じる約束をしただけの間柄なのに──。
「君は美咲の同僚なのに、失礼をした。これからもパレットでは、美咲のことを助けてやってくれ」
言い添えて、近衛さんは私に「出よう」と声をかけた。
半ば呆然としながら荷物を持って席を立った私は、お店を出る間際にノブくんを振り返った。
けれど、ノブくんは肩を落として俯いていて、声をかけられる雰囲気ではなかった。
「今は、そっとしておいてやれ」
「え……」
一言そう言うと、近衛さんは私の肩を抱き寄せてお店を出た。
バクバクと胸の鼓動が高鳴っているのは、先ほど彼から告げられた言葉のせいだ。