【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
遠くで聞こえる雨音。
瞼の向こうは暗い。
(いつの間に眠ってしまったんだろう……)
佳織はぼんやりとした頭で考える。程よい硬さのマットレス、ふうわりと体を包み込む羽毛布団、やわらかい枕。寝心地の良さに再び目を閉じてしまいそうになるが、ふと思い出して飛び起きた。
(このベッド、私のうちのじゃない。ここは?)
辺りを見回すが、誰もいない。イエローとオレンジの南仏風の壁紙、グレーの重厚そうなカーテン、窓辺には猫足のテーブルと椅子。佳織の寝ているベッドのほかにもう一台の整えられたベッド。チューリップ型の傘が付いたルームランプ。ちょっと洒落たホテルだと佳織は理解した。
(でも、どうしてホテルに?)
ここに来るまでの記憶を手繰り寄せる。仕事が終わって、デパ地下にいったら真佐課長と出くわして、課長にジムに連れていかれた。そこでひと汗もふた汗も流し、食事をご馳走するからと小料理屋に立ち寄った。そこで課長に意味深なことを囁かれ、真意を聞こうとしたところで記憶が途絶えている。
(じゃあ、私は……課長にここに連れてこられた?)
さっきまで聞こえていた雨音が突如止んだ。そこで佳織は気づいた。あの水の音は雨じゃない、シャワーの音だ。ということは今、浴室にいるのは。
(……課長が??)
自分の恰好を見下ろす。ブラウスにチュールのスカート。下着は着ている。ストッキングもはいている。とりあえずそういうことはしていないらしいけれど。かちゃりとドアの音がして佳織は視線をそちらに向けた。
瞼の向こうは暗い。
(いつの間に眠ってしまったんだろう……)
佳織はぼんやりとした頭で考える。程よい硬さのマットレス、ふうわりと体を包み込む羽毛布団、やわらかい枕。寝心地の良さに再び目を閉じてしまいそうになるが、ふと思い出して飛び起きた。
(このベッド、私のうちのじゃない。ここは?)
辺りを見回すが、誰もいない。イエローとオレンジの南仏風の壁紙、グレーの重厚そうなカーテン、窓辺には猫足のテーブルと椅子。佳織の寝ているベッドのほかにもう一台の整えられたベッド。チューリップ型の傘が付いたルームランプ。ちょっと洒落たホテルだと佳織は理解した。
(でも、どうしてホテルに?)
ここに来るまでの記憶を手繰り寄せる。仕事が終わって、デパ地下にいったら真佐課長と出くわして、課長にジムに連れていかれた。そこでひと汗もふた汗も流し、食事をご馳走するからと小料理屋に立ち寄った。そこで課長に意味深なことを囁かれ、真意を聞こうとしたところで記憶が途絶えている。
(じゃあ、私は……課長にここに連れてこられた?)
さっきまで聞こえていた雨音が突如止んだ。そこで佳織は気づいた。あの水の音は雨じゃない、シャワーの音だ。ということは今、浴室にいるのは。
(……課長が??)
自分の恰好を見下ろす。ブラウスにチュールのスカート。下着は着ている。ストッキングもはいている。とりあえずそういうことはしていないらしいけれど。かちゃりとドアの音がして佳織は視線をそちらに向けた。