【短編】ホワイトデーには花束を、オレンジデーには甘いキスを(三人称)
*-*-*
それから二日ほど後のことだ。
「真船、今日もどうだ?」
そう誘われ、佳織は再びジムにやってきた。ビジター料金を課長が支払い、佳織はマシンで汗を流す。2回目とあって今日はさほど息は上がらなかった。課長は佳織よりも早いピッチで走っている。額から汗を流し、力強く足を運ぶ。いつもと変わらない課長……いや、オフィスにいるときより格段に甘い気がする。例えば表情。オフィスでは佳織に難しい顔を見せるのに、ここでは佳織と目が合うとほんのりと笑うのだ。
(かわいい、な……課長)
佳織の顔が緩む。そんな佳織を見つけて課長は意地悪に笑う。
「なにを笑ってる。そんな余裕があるならピッチを上げろ」
「す、すみません」
命令口調の言葉とは裏腹に課長の笑顔は優しさにあふれている。恥ずかしくなって佳織は前を向いた。窓に向かって走る位置、夜景を見下ろしながら走っていると嫌なことをすべて忘れられる。例えば、萌絵。あれから少し距離を置かれている。この二日ともランチに誘ったのだが断られた。それもあからさまに佳織を避ける理由で、だ。新メニューが加わったリストランテに誘うとパスタを食べたい気分じゃないと佳織の誘いを断ったのに、別の課の同期とその店に行っていたのだ。今日も社員食堂に誘ったが弁当を持参したと断られ、でも萌絵はまた違う同期とコンビニに弁当を買いに出かけていた。
佳織は思い出して足元に視線を落とした。
「おい。下を見てると転ぶぞ」
「あ、はい」
顔を上げる。目の前の暗い窓に課長の姿が映る。ちらちら見ながら走れるのは嬉しかった。
それから二日ほど後のことだ。
「真船、今日もどうだ?」
そう誘われ、佳織は再びジムにやってきた。ビジター料金を課長が支払い、佳織はマシンで汗を流す。2回目とあって今日はさほど息は上がらなかった。課長は佳織よりも早いピッチで走っている。額から汗を流し、力強く足を運ぶ。いつもと変わらない課長……いや、オフィスにいるときより格段に甘い気がする。例えば表情。オフィスでは佳織に難しい顔を見せるのに、ここでは佳織と目が合うとほんのりと笑うのだ。
(かわいい、な……課長)
佳織の顔が緩む。そんな佳織を見つけて課長は意地悪に笑う。
「なにを笑ってる。そんな余裕があるならピッチを上げろ」
「す、すみません」
命令口調の言葉とは裏腹に課長の笑顔は優しさにあふれている。恥ずかしくなって佳織は前を向いた。窓に向かって走る位置、夜景を見下ろしながら走っていると嫌なことをすべて忘れられる。例えば、萌絵。あれから少し距離を置かれている。この二日ともランチに誘ったのだが断られた。それもあからさまに佳織を避ける理由で、だ。新メニューが加わったリストランテに誘うとパスタを食べたい気分じゃないと佳織の誘いを断ったのに、別の課の同期とその店に行っていたのだ。今日も社員食堂に誘ったが弁当を持参したと断られ、でも萌絵はまた違う同期とコンビニに弁当を買いに出かけていた。
佳織は思い出して足元に視線を落とした。
「おい。下を見てると転ぶぞ」
「あ、はい」
顔を上げる。目の前の暗い窓に課長の姿が映る。ちらちら見ながら走れるのは嬉しかった。